恐い体験/古びた旅館で じいじ&ばあばホームへ

ばあば1  夏になるとテレビでも怪談とかよくやるわよね。
じいじ1  ああ、そうだねえ。結構みんな興味あって見てたな。
ばあば1  やっぱり娘だけはダメでしたけどね。
じいじ1  ああ、ひとりで自分の部屋に閉じこもって大きな音で別のテレビを見たりしてたなあ。
ばあば1  間違ってワンシーンでも見てしまったらもう大変!
じいじ1  ははは、そうだなあ。作り物だって結末がわかるまで見るって言い出すし。
ばあば1  見たら見たで、一人で寝れなくてふとんを持ってきたり・・・
じいじ1  何であんなに恐がりなんだろうなあ。
ばあば1  そういえば、また恐い話しがあるって言ってたけど。
じいじ1  ああ、もっと恐い話しだよ。これも実際に体験したから・・・
ばあば1  恐いもの聞きたさ?だわ、さあ、話してくださいな。

昭和34年頃の実際に体験したお話しです。

当時は、まだ青函連絡船が活躍していました。

私は函館から青函連絡船に乗り、青森に午後11時半頃到着しました。

翌日の午前6時頃に青森駅より発車する大阪行きの列車に乗る予定でした。

約6時間ほどではありましたが、近くに宿があればと思い探していると、駅から歩いて1分くらいのところに古びた旅館を見つけました。

旅館に入り部屋があるかどうか尋ねて見ると、早速案内してくれました。
案内された部屋は、入った瞬間からカビくさく、異様な雰囲気がただよっていました。

とはいっても、朝まではあとわずかと思い、ここで休むこととしました。
依然不気味な思いは消えないまま8帖ほどの部屋で一人になりました。

布団に入ろうとすると、布団までカビくさく、私はよくこんなカビくさい部屋を案内したものだと思いました。
しかし、私も長旅で疲れていたので、すぐに眠りについていました。

しばらくすると、何だか蒸し暑く、空気もおかしく、身体が重く、首も苦しい感じがしました。
あまりにも身体がおかしくて、ハッと目を覚ましました。

すると、私の身体の上に大きな男が私の首をしめていたのです。
寝ていたせいなのか、その男は本当に大きく見えました。

私とその男の目が合うと、その男は首から手を放しました。
私は、必死になって身体を動かそうとするのですが、身動き一つすることができませんでした。

これが金縛りというものなのかと思いました。

しばらくすると、その大男は急に、スーッと立ち上がり、スーッと部屋の戸を開けて、出て行きました。

呆然とその様子を見ていると、私は身体を動かせるようになっていました。
すぐに、戸を開けて男がどこへ行ったのか見てみました。

しかし、廊下は明るく電気がついていたのに、人の姿などありませんでした。

そして私は部屋に戻りましたが、その夜は二度と眠りにつくことはありませんでした。

朝5時半頃になる急いでこの旅館を後にして、6時頃列車に乗り込みました。

あのような体験は初めてでした。
いくら古びた旅館であったとしても、あれほどカビ臭く、異様な雰囲気のただよう場所はその後もお目にかかったことはありません。
もしかしたら、あの旅館のあの部屋で自殺した方や、事件があったのではないかと、今でも思っております。

思い出しただけでもゾッとする体験でした。

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