それゆけ!ハットマン6 |
ある昼過ぎのことだった。 玄関先でチャイムの音がする。 ピンポン、ピンポン。 「今の時間に人がくるなんて珍しいな。一体誰だろう?」 おじさんが玄関のドアごしに「どなたですか?」とたずねた。 すると女の人の声で「はい、わたしはハットマンです。」と答えた。 おじさんは「あれ?おかしいな?朝から出かけているうちのばあちゃんにそっくりの声だな。それにしてもハットマンだなんて、家でも間違えたのかな」と心の中でいろいろと考えていた。 おかしいなと思いながらもこっそりドアののぞき穴からのぞいてみると、やっぱりおばあちゃんだった。 おじさんは急いでドアを開けておばあちゃんに聞いた。 「ばあちゃん、どうしたの?カギもってるでしょう?」 「ああ、カギを忘れてしまってね、チャイムを押したんだけど、こんな時間に人がくることはないから、お前さんがびっくりするだろうと思ってね。」 「そうだったの。でも何でハットマンなんて言ったの?ハットマンなんて言葉良く知っていたね。」 「・・・」 「あっそうか!ハットマンってばあちゃんが子供の頃だっていたんだよね。知っててもおかしくないよね。子供の頃はみんな御世話になってるもんな。それを思い出したんだね?」 それからというものおばあちゃんは外に出かけて帰ってくるときはチャイムを押している。 おじさんは「どなたですか?」と必ず聞き返すので、おばあちゃんは「私はハットマンです。」と答えている。 すっかりこれが家の人かよその人かを区別するための暗号にしているようだ。 これは今になってはじまった話ではなかった。 何十年も前に子供達が遊びながらそんなことをしていたことがあるとおぼろげな記憶があった。 そして、遠い記憶がかすかによみがえってきた。 おじさんの家でもハットマンのお世話になったこと。 ハットマンのおかげで、子供達が毎日お風呂に入るのが大好きになったこと。 ハットマンに頭をいいこ、いいこされて大喜びの子供達の顔。 ハットマンが現われるたびに、「うわーハットマンだ!」とあたりが大騒ぎになったこと。 おじさんは、ハッと我にかえると、あたりが騒がしいことに気が付いた。 「ハットマンだ!」「ハットマンだ!」 そしてうれしそうな子供の声が大きく聞こえる。 「ママー!今日おうちにハットマンが来てくれたから、もう大丈夫!!お風呂大好き!!もう目も痛くないし、お口にもお湯が入らないし、頭はきれいになるし、楽しいよ!!それにね、幼稚園のお友達もみんなハットマンが頭をいいこ、いいこしてくれたから、強くなれたっていってたよ!!ぼくも今日から強くなったんだよ!!みんなハットマンが来るのを楽しみにしてるんだよ!!」 おじさんは昔も今もハットマンがあちこちで喜ばれていることをとてもほほえましく思った。 「本当にハットマンがいてくれて、今も昔も助かっているね。あ〜、外にでも出て新鮮な空気でも吸うか!」とおじさんは家の中から外に出た。 「あれ?あそこにいるのがハットマンではないのか?!今日はチイちゃんのところへきたんだね。チイちゃんもハットマンが来てくれてさぞかしうれしかったことだろう。」 「ハットマン。来てくれてありがとう!チイちゃんもう強くなったよ!」 「ハットマン、どうもありがとうございます。」 チイちゃんも、おかあさんも感謝の気持ちでいっぱいの笑顔だった。 それを遠くから見ていたおじさんは「本当にハットマンには感謝、感謝じゃよ。毎日毎日ありがたいことだ。」と心の底から思った。 ハットマンはそんなみんなの気持ちをよくわかっていた。 毎日忙しいけれど、それは大変ありがたいことだ。 逆に子供達から愛をもらえるからだ。 だから、毎日困っている子供達やお母さんたちのために、元気にがんばってるんだ。 それゆけ!ハットマン! |
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