それゆけ!ハットマン10 じいじ&ばあばホームへ
夢ケ丘公園の1日の始めと言えば、若者や元気に頑張っているお年寄り達の姿で賑わう光景です。
みんな朝から何をしているかというと、走ったり、体操したり、散歩をしたりと実にさまざまです。

「おはよう!おはよう!」と朝の仲間に声をかける姿は、見ているだけでさわやかな気分になります。

特に目立つわけでもないが、汗をたっぷり流して公園を数十回とかけ回っている人がいます。

それを見ていたお年寄りも
「よくスタミナも切れることなく走っているなあ。オリンピックにでも出る人なんだろうか?」と感心しています。

若者達も
「なかなか元気はつらつな人ですねえ。」
と話しています。

そばに行ってどんな人なのか見ていると、何周か目の前を通り過ぎるうちに何だかどこかで見たような顔をしています。公園のあちらこちらから「誰だろう?誰だろう?」とうわさになっています。

一人のお年寄りが
「ひょっとしたら、あれ、え〜と、あれ、あれ。すぐに名前が出てこないなあ。ええ〜・・・」
とぶつぶつ言っていました。
するとそばにいた若者の一人が
「あ〜、ハットマンじゃないの〜」
と言いました。
すると、お年寄りは
「あ〜、そうそう、ハットマン!ハットマンだよう!」
とやっと名前を思い出しました。

あちこちでも「あ〜、ハットマンだ!ハットマンだ!」と声が聞こえてきました。

お年寄りは
「わしは年とってしまったせいか、すぐに名前が思いだせんで申し訳無いなあ。それにしても、最初からもう2時間も何百回と走りまわっていたが、よくペースが落ちないもんだねえ。」
とハットマンに話しかけました。

ハットマンは
「いえいえ、これが私の仕事ですから。足腰は何十年経とうが丈夫ですし、スタミナが切れることもまず無いですね。」
と息を切らすこともなく話しました。

お年寄りは
「そりゃあすごい!わしは若い頃からハットマンを知っているが、見た目も全然変わらないねえ。」
と驚きの声をあげました。

ハットマンも
「そうですね。若い人達に負けるわけにはいきませんし、負けるようではあちこちまわれませんから。それに、楽しみに待っている子供達をがっかりさせてしまうことになりますし。ハットマンはいつまでもみんなの味方ですから!!」
と強い気持ちをこめたかのように言いました。

お年寄りは
「ところでハットマンは若く見えるが、一体いくつになるんだね?」
と不思議そうに聞きました。

ハットマンは大きな声で笑いました。
「私には年はないんです。年のことを考えると足腰が弱ってしまうし、子供達の夢を壊してしまいますから。」

お年寄りは
「そうか、そうか。今日はお休みかい?」
と聞きました。

ハットマンは
「ハットマンに休みはないんですよ。ハットマンは、いつでも子供に夢や希望をもってもらうために、子供達の空気のような存在でなくてはならないんです。空気がなくては呼吸ができないのと同じで、ハットマンが休めば子供達が悲しみますから。でも、休みがなくてもハットマンはみなさんに喜んでもらうことで支えられているんですよ。ハットマンでいることがとてもうれしいです。」
とにこやかに話しました。

お年寄りはハットマンのすばらしいお話しを聞いて感動していました。

「あっ、そろそろ失礼いたします。えっと、スケジュールは・・・山梨、今日は山梨までいくんですよ。」
そう言うと、ハットマンは公園を去って行きました。

「頑張れ!ハットマン!」
公園のあちこちから応援の声が飛び交っていました。

ハットマンは山梨へと向うのでした。
「山梨かあ、山梨から見る富士山は最高だねえ。毎日富士山を眺めながら暮らせる人達は幸せだろうねえ。」

そしてハットマンは山梨に到着しました。

「お〜、ここからの眺めも最高だ!富士山が格別にすばらしい!!きっと富士山はここからみんなの健康を見守っているんね。こんな環境に恵まれていたら子供達もいい子ばかりだろうねえ。」
と言いながら深呼吸しました。

「さあ、ちえちゃんのところへ行ってみるかな。」

「あ〜、ここか。ちえちゃんはいるかな?トントン、ちえちゃん!トントン、ちえちゃん!」

中から親子の会話が聞こえてきます。
「ママ〜、誰か来たよ〜!」
「えっ、別に何も聞こえないわよ。」

「トントン、ちえちゃん!」

「ほらあ、ママ聞こえるでしょう?!」
「あら、本当。誰かしら。」

ママは玄関の扉を開けました。

「ハットマン!?どうしたんですか?」

「ええ、今日はちえちゃんのところへうかがいました。」

「そうなんですか?お忙しいでしょうに、ちえのところへきていただいてどうもありがとうございます。」

「ところでちえちゃんはいらっしゃいますか?」

「ええ、おります。少々お待ち下さい。ちえ〜!ちえ〜!早くきてごらん!ちえの大好きなハットマンが来たわよ!」

「えっ、ママ今なんて言ったの?」

「ちえの大好きなハットマンが来たわよって」

「え〜、本当?」とちえちゃんは急いで玄関にやってきました。

そんな様子をハットマンは笑顔で見ていました。

ちえちゃんは、笑顔のハットマンにかけよりました。
「ちえのところへ来たの?夢じゃないよね?本物だよ!そうだよね?ちえねえ、ハットマン大好きだよ!早く、ちえと一緒にお風呂に入って、頭をきれいきれいにしてね!ママ、ママ、お風呂行く〜!」

「そうねえ、早くハットマンに頭キレイキレイにしてもらいなさい。」

「うん!わ〜い」
ちえちゃんは大喜びです。
「ハットマン来てくれてうれしいよう!ハットマンは、どうなの〜?」

「ハットマンもちえちゃんとおんなじだよ。うれしいよう。」

「わ〜い!うれしい!!ねえねえハットマン、ちえねえ、頭がかゆいよう!」

「そんなにかゆいのかい?」

「ううん、本当はかゆくないの。ハットマンにたっくさん頭キレイキレイにしてもらいたかったの・・・ごめんなさい。」

ハットマンは自分がこんなに頼りにされていることを本当にうれしく思いました。

「それでは、そろそろ、次のところへ行かなくてはなりませんので。」

「ちえちゃん、良かったわね。」

「うん」

「ちえちゃん、ママと仲良く、いい子でいるんだよ。」

ハットマンとちえちゃんは指切りをして約束をしました。

「バイバイ!!」
ちえちゃんは小さなおててをふり、名残惜しそうにいつまでもハットマンを見送っていました。

それゆけ!ハットマン。
今日も、待っている子供達のところへと向うのでした。

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