天国のしんちゃんへ 〜それから |
しんちゃんが天国に行ってから、おかあちゃんは、毎日、毎日、来る日も来る日も、しんちゃんの事を思っていた。 ふと、おかあちゃんは、天国でしんちゃんは一人で何して遊んでいるんだろう?と思いながら、花畑を通って、遠い道のりを歩いていった。 そして歩き始めてから数時間もたったと思われる。 すると、なんと、そこにはニコニコしたしんちゃんが、男の子二人と三人で仲良く遊んでいるではないか! おかあちゃんは、しんちゃんも友達が出来て、仲良く遊んでいる姿にホッとしたようだ。 しばらく、おかあちゃんがしんちゃんの様子を見ていると、おやつの時間か昼食の時間のようで、しんちゃんと二人の男の子はおいしそうに何かを食べているように見えた。 その時、しんちゃんはおかあちゃんをみつけて、「おかあちゃん!」と言いながら走って来た。 「いつもおいしい物、しんちゃんの大好きな食べ物、きれいなお花をありがとう!」とニコニコして話し掛けてきた。 久しぶりにニコニコしたしんちゃんを見たおかあちゃんはとてもうれしかった。 でも、おかあちゃんは、ニコニコしたしんちゃんとは反対に、もう一人の男の子は何だか淋しそうな顔をしていたことに気が付いた。 「しんちゃん、あの子少し淋しそうだね。」というと、しんちゃんは、「うん、あのね、あの子はねマサル君というの。マサルちゃんのママとパパがマサルちゃんと一緒に身投げしたんだって。」と話してはじめた。 「でもね、マサルちゃんだけ助け出されなかったんだって。助かったマサルちゃんのママとパパは、毎日なんて事したんだって後悔してるみたい。マサルちゃんに申し訳ないと思いながらも、満足に食べる物やお花をあげられないんだって。だってマサルちゃんの家は借金があってお金が無いんだって・・・」 しんちゃんの話しを聞いたおかあちゃんはとてもせつなくなった。 「しんちゃんねえ、おかあちゃんからもらった食べ物やお花を、マサルちゃんにもあげているんだよ。」 天国にいっても、心の優しいしんちゃんの言葉におかあちゃんは涙がでそうになった。 「でもねえ、マサルちゃんはいっていたよ。マサルちゃんのママとパパの所へ行ってみたら、泣きながらマサルちゃんにすまないって。あの子はお腹をすかせているだろうねえ、ごめんなさいと手をあわせていたんだって。でもね、マサルちゃんはうらんでないって。友達もできたから淋しくないって。」 「そう、マサルちゃんはパパやママのことを大好きなんだね。」おかあちゃんはしんちゃんにそう言った。 「うん、それでねえ、もう一人の子はサトル君というの。あの子は車にはねられたんだって。サトル君のママとパパは毎日悲しい日をすごしているんだって。でも、友達ができて仲良く過ごしているから心配しないで、といっているよ。」 おかあちゃんは、しんちゃんは心のいい子だから良かったとつくづく思った。 すると、しんちゃんは「時々おかあちゃんの所にいっているんだよ。おかあちゃんは、しんちゃんはお腹すいているんではないかと心配して一番先にごはんをあげてくれるし、おやつや、お花も忘れずにあげてくれるよね!しんちゃんうれしいよ。今でもおかあちゃんの子供で良かったと思っているよ。」とニコニコしていった。 おかあちゃんはやさしく手を握ろうと、「しんちゃん」と声をかけると、しんちゃんはニコッと笑って「バイバイ」と手を振りました。 「なんで、しんちゃんバイバイするの!」 おかあちゃんはしんちゃんのことを追いかけようとするが、なぜか腰が重くて、しんちゃんの走っていくのに追いつかず、ぐんぐんと離されていく。 おかあちゃんは、「しんちゃん待って、待って!」といいながら走るが、もう、しんちゃんの姿が見えない。 「しんちゃん、しんちゃん」と泣きながら、あっち、こっち、捜し回っていたら、しんちゃんが笑いながら、「おかあちゃん、あんまり歩き回ると疲れて家に帰れなくなっちゃうよ。早く家に帰らないとダメだよ。」と。 おかあちゃんは、「なにいってるの、しんちゃん!一緒に帰らないとダメよ!」と叫んだ。 しかし、しんちゃんは手を振りながら遠くへと消えていった。 おかあちゃんは、ふと目がさめ、あたりを見回すがしんちゃんはいなかった。 今のは夢だったんだ。 それでも、しんちゃんと会えてうれしかった。 今日も一番先にしんちゃんにご飯をあげて、「しんちゃん、おはよう!マサルちゃんとサトルちゃんと仲良くしてね。今日も一日いい日でありますように!」と天国のしんちゃんに語りかけるのだった。 「しんちゃん、またおかあちゃんの所に会いにきてね。いい夢待ってるよ。」 |
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