一つの明かり |
今日は朝から、天気がとてもよい日でした。 おじいさんとおばあさんはお弁当を持って、山歩きをすることにしました。 山はとっても空気が澄んでいました。 あたりからは美しく聞こえてくる虫の声や鳥の声。 心がやすらぐようでした。 お昼になってお弁当を食べていると、虫たちがちらほらと周りに集まってきました。 じっとおじいさんとおばあさんの方を見ています。 「おお、ごめん、ごめん。私達だけでお弁当を食べていて、申し訳ない。」 そう言うと、虫たちにお弁当をわけてあげました。 虫たちもうれしそうに食べていました。 虫たちはお腹がいっぱいになったのか、また山の奥へと帰っていきました。 おじいさんとおばあさんも、楽しい山での時間を過ごすことができたので、そろそろ家へ帰ることにしました。 ところが、少し山の奥までに入り込んでしまったのか、方向を見失ってしまいました。 「ああ、こりゃあ大変だ!」 おじいさんとおばあさんは困り果てて、あちこち歩き回りました。 やがてあたりも暗くなってしまい、どうすることもできずに座りこんでしまいました。 山の虫たちはおじいさんとおばあさんがまだ山にいることに気が付きました。 虫たちは仲間を集めて、おじいさんとおばあさんが大変なことになっていることを伝えました。 そしてどうにかしておじいさんとおばあさんを無事に家へ送ってあげることができないかと相談しました。 「あっ、そうだ!ホタルさんに頼んで見ようか!!」 早速虫たちはホタルさんに事情を話しました。 するとホタルさんは「そりゃあ大変だ!おじいさんとおばあさんを家まで届けなくっちゃ!私にまかせて!」と言いました。 おじいさんとおばあさんが途方にくれていると、急に周りが明るくなりました。 おじいさんとおばあさんの周りにはたくさんのホタルが光を出していました。 その明かりはまぶしいくらいでまるで昼間のような明るさでした。 おじいさんとおばあさんは、その明かりのおかげで無事に家までたどりつくことができました。 ホタルたちのおかげで命が助かったことに、とても感謝しました。 ホタルは無事に二人を見届けると、また山へと帰っていきました。 おじいさんとおばあさんは、小さな虫たちに助けられたことで、同じ生き物としての命、助け合うことの大切さをつくづく感じました。 そして真っ暗な山を登って行く一筋の明かりが見えなくなるまでずっと山を見つめていました。 ホタルさん、虫たちよ、どうもありがとう。 |
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