壁の穴 |
「ああ嫌だ!外に出るのが嫌だよ!つまんないよ!家の中がいいよ!」とまさ坊が言う。 おかあちゃんは「まさ坊、外はいいよう。お天気をいいし、色んな物見たりして楽しいよう。外へ行こうねえ。」と誘う。 それでもまさ坊は、「嫌だ!嫌だ!人の顔を見るのが恐いよ!嫌だよ!」と言う。 それから数日後、まさ坊は家の壁に小さな穴を見付けた。 まさ坊は、「あれ?何だ?明かりが見えるぞ。」と言いながら、何気なく外をのぞいて見た。 すると外は天気が良く、楽しい声や鳥の声が聞こえてくる。 何だかとても楽しそうだった。 青い空、緑の木々、色とりどりの花、小鳥のさえずり・・・ あまりにも家の中と違うので、しばらく見とれていたら、いつの間にか外に立っていた。 地べたにはりついてみると、虫たちがたくさんいた。 あっちへいったり、こっちへいったりで、元気いっぱいに動き回っている。 まさ坊は、時間の経つのも忘れて、外で楽しんでいた。 辺りが薄暗くなってきたころ、おかあちゃんはまさ坊が家の中にいないことに気が付いた。 心配になって家中探したが、どこにもいない。 まさか、家出?誘拐?と悪い方向にばかり考え始めたときだった。 外からまさ坊の笑い声が聞こえてきた。 窓から外をのぞいてみると、まさ坊が楽しそうに外で遊んでいる。 おかあちゃんは安心して、まさ坊に声をかけた。 「まさ坊!」 まさ坊はその声に気付きおかあちゃんを見て言った。 「本当だね、外はとっても楽しいんだね。」 それからというもの、まさ坊から外へ行こう、行こうとおかあちゃんを誘うようになった。 おかあちゃんは家の中の用事もあったが、まさ坊が明るく楽しく外へ出るようになって良かったと思った。 実は壁の穴は、おかあちゃんがせめて外の景色を何気なく見れるのではないかと思い、こっそり開けていたものだった。 |
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