つぶ貝の親子のきずな じいじ&ばあばホームへ
「おお、今日も天気が良いなあ」
つぶ貝のパパは空を見上げて言いました。
海の中では小さなつぶ貝が楽しそうに遊んでいました。
パパはつぶ貝の子供を見て言いました。
「いつもの通りしっかりと岩にしがみついてなさい」

「はーい!でも、本当に海っていいよね!こんなに広いんだもん!それに毎日、パパやママ、兄弟達とたくさん遊べて、楽しいよねえ」
小さなつぶ貝は、ニコニコとうれしそうに言いました。

「海だっていい時ばかりじゃないからな。ちゃんとパパとママの言うこと聞くんだよ」
パパは少し恐い顔をして言いました。
「うん!この間、海が大荒れの時、パパとママがしっかりと岩にしがみついてなさい!って言ってくれたよね。パパとママがいるからぼく安心だよ」
小さなつぶ貝は無邪気にほほえみました。

ある日のこと、海の外から声が聞こえてきました。
「おい、こっちに来いよー!貝があるよー!」
それはつぶ貝の何倍いや何十倍、何百倍も大きい人間です。
人間はつぶ貝が大好物らしいのです。

パパとママは大きな声で叫びました。
「岩場から離れるんだ!」
すると、急に大きい手がヌウッとつぶ貝一家の目の前に現われました。
パパとママはサッと身を隠しました。
しかし、小さなつぶ貝はまだ岩場にくっついています。
パパとママは、子供が連れていかれたらどうしようと心配でしかたがありません。

小さなつぶ貝はパパとママがいないことに気が付き、探しに行こうと海の中へもぐりました。
「パパ!ママ!どこにいるの?」
すると岩の下から小さな声が聞こえてきました。
「こっちよ、こっち!」
岩の下にひっそりと隠れているパパとママがいました。
小さなつぶ貝は、すぐにパパとママのそばへと行きました。
「パパ、ママ、何でこんなところにいるの?しっかり岩場につかまっていないと離れ離れになっちゃうって言ってたじゃない?」

その時、大きな手が岩の下にも伸びてきました。
その大きな手は、小さなつぶ貝のすぐそばをあっちへこっちへと動いています。
小さなつぶ貝も今まで見たこともない生き物にブルブルとふるえだしました。
「キャー、助けて!どうか私達家族を守って!」
パパとママは必死にお祈りしています。

しばらくすると、その願いが届いたのか、大きな手はいなくなりました。
そして外から「何だ逃げ足の速いつぶ貝だ!」とブツブツ言っている声が聞こえてきました。

パパが外をのぞくと、人間はもうずっと遠くにいました。
「もう大丈夫だよ。さあ岩場にくっついて一緒にいようね」
パパとママ、小さなつぶ貝は、また一緒に暮らせることを心から喜びました。
小さなつぶ貝にとっては、はじめての人間でした。
「人間って恐いんだね」
小さなつぶ貝はパパとママにしがみついて言いました。

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