いがいが栗とおばあちゃん |
秋になったので、パパとママと春ちゃんは一緒にハイキングに行くことにしました。 ハイキングといっても、行く先はおばあちゃんの家の裏山です。 その裏山は栗の木がたくさん生えていて、ちょうど栗拾いができる頃なのです。 春ちゃんはおばあちゃんに会うのはひさしぶりなので、うれしくていろいろと想像していました。 「おばあちゃんってどんな顔だっけ?」 「おばあちゃんってやさしかったかな?それともこわかったかな?」 ひさしぶりといっても、春ちゃんがおばあちゃんに会ったのはまだ一才の頃でしたから、こんな風に想像するのも無理はありません。 おばあちゃんの家の裏山につくと、おばあちゃんがニコニコして待っていました。 「おお、春ちゃん。大きくなったねえ。元気で良かった、良かった」 春ちゃんは、おばあちゃんはやさしかったんだと思うとホッとして、ニコリと笑いました。 「ほら、これが栗だよ。気をつけてさわるんだよ」 おばあちゃんは、春ちゃんの小さな手にそっとイガイガのついた栗をのせました。 春ちゃんはむいた栗しか見たことがなかったので、びっくりしました。 「おばあちゃん、これ栗なの?なんでこんなにとげがいっぱいついているの?」 おばあちゃんは大きな栗の木を指さして話はじめました。 「この木は、栗のお母さんなんだよ。お母さんは栗が立派に育つまで大事に大事に抱きしめてるんだよ。そして、栗の子供は一人でも遊べるようになると、お母さんの木からジャンプするの。いちにのさんってね。大きな大きなお母さんの木からジャンプするのは勇気のいることでね、子供がケガをしないようにトゲトゲで包んでくれてるの。ほら見ていてごらん」 おばあちゃんと春ちゃんは、栗の木をじっと見つめていました。 すると一つのイガイガ栗が落ちてきました。 「あっ、本当だ。栗さんけがしなかったね。それにちょこっと顔出して、お母さんの方を見ているみたい!」 「そうだねえ、よく飛べたねってお母さんもニコニコしているね。この栗さん、春ちゃんのこと見ているよ。一緒に遊ぼうって」 春ちゃんは、今落ちてきた栗をそっと拾いあげました。 「わあ、かわいい」 春ちゃんは、最初は、イガイガした栗がこわかったし、おばあちゃんもこわかったらどうしようと、少し心配でした。でも、栗のお母さんのお話を聞いて、イガイガした栗もかわいく思えたのです。 そしておばあちゃんの優しい笑顔とお話で、すっかりおばあちゃんのことが大好きになりました。 |
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