羽根があったら じいじ&ばあばホームへ
カメのじいさんのお話です。
今日は久々のお出かけです。
足腰が弱っているので、バスに乗って出かけます。
バス停までの道のりには、段差があったり、自転車やいろいろな物が置いてあります。
カメのじいさんには大変なことです。ちょっと気を抜くと、段差につまづいたり、自転車などをやっとこさよけながら歩きます。

なんとかバス停につき、ちょうどやってきたバスに乗ろうとしました。
よいしょ、とバスのステップへ足を乗せようとしましたが、なかなか足があがりません。
他の乗客たちは、だんだんイライラしてブツブツ言いはじめました。

「早く乗ってくれよ!」
「時間が遅れるよ!」

「すみません、私のようなカメには背伸びしてもこの階段が高くてね。よっこらしょ」

ブツクサののしる乗客の中で誰一人としてカメのじいさんに手を貸そうとするものはおりません。
カメのじいさんは、誰でも乗りやすいバスがあればとつくづく思いました。

「おいおい、早くしてくれよ、これじゃあ遅刻だ」
「そうよ、そうよ、早くしてよ」

あまりにせかされて、カメのじいさんの頭の中は真っ白になりました。
カメのじいさんはバスに乗るのをあきらめてしまいました。
バスは、何事も無かったように走り出しました。

バスの後姿を見ながら、カメのじいさんは思いました。
「ああ、情けない。私にも羽があったらなあ。みんなにブツクサ言われずにホイッとひとっとびで乗ることができたのに」
カメのじいさんは空を見上げました。
空には小さな小鳥たちが自由に飛び回っています。
「そうかあ、羽があれば、バスに乗らなくても自由に飛び回っているに違いないなあ」
便利になった世の中。
でもそれを利用できない不便さを実感したカメのじいさんは、のっそりのっそりと道を歩いていきました。

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