道路の向こう じいじ&ばあばホームへ
バッタのターちゃんは、お母さんにこう聞きました。
「ねー、道路の向こうって行ったことないよね?」

「そうね、昔はよく行ったけど、ターちゃんは行ったことないかもしれないね」

「へえ、そうなんだ。なんで今は行かないの?」

「これも文明の発達というか、コンクリートで出来た大きな道が出来てね。私たちには歩きにくくなったのよ」

「ふーん。道路の向こうには何しにいったの?」

「道路の向こうにも私たちの親戚や友達がたくさんいたのよ。よく行き来して交流してたの」

「いいな、もっとたくさん友達がほしいよ!」

「・・・ほら、あの人間のおじいさんをみてごらんなさい」

「うん、道路のはしで待ってるね。なんでわたらないのかな?」

「あそこに赤、黄色、青の光るものがあるでしょう。あれが渡っていいかどうか合図をするらしいの」

「あっ、本当だ。おじいさん急に渡りだしたよ」

「でもお年寄りはその合図が変わる前に渡るのがやっとで大変だってうわさよ」

「へえ、人間の方がぼくたちよりうんと大きな身体してるのに、渡るの大変なんだ」

「そう、だから私たちにはもう道路の向こうへは行けないのよ」

「・・・うん。でも一回くらいは行ってみたいな」

「・・・かわいそうだけど、危ないからね。ずっとお母さんのそばにいるのよ」

ターちゃんは、本当は道路の向こうに行きたくてしかたありませんでした。
だって、どんな友達がいるのか、どんなところか見てみたかったからです。
でも、お母さんの方を見て言いました。

「うん、わかったよ。ぼくはお母さんのそばが一番いいからね!」

お母さんはうれしそうにほほえみました。

それでもターちゃんは、道路の向こうを見て、大きくなったら行ってみたいなとひそかに夢をいだいていたのでした。

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