うまくいかない じいじ&ばあばホームへ
わしが仕事をしていると前を通るものはみんな声をかけてくるんだ。
「おじさん、何してるの?」と。
でも、声をかけてくるときは、あまり近寄らないでジッとこっちを見ているんだ。

わしが「仕事だよ」と言うと
「それはすばらしい技術だね!誰にもまねはできないね」
とほめるが、そのまま遠くへ行ってしまう。

仕事をしているときに声をかけられると調子がくるってしまうよ。
わしにとってこの仕事は、真剣勝負なんだから。

あまり目立つ場所で仕事をしていると、すぐに声をかけられるからやりにくい。
仕方なく、できるだけ目立たない場所で仕事をしている。

せっかく一仕事を終えてそろそろごはんにしようとすると・・・
「あっ、すごいね、これ!おじさんが作ったの?」
遠くから声をかけてくる。

またかと思いながら「そうだよ」と言うと
「なんて美しいんだ!ああ、でも危なかった」
と言いながら、遠くへ行ってしまう。

ああ、残念。
わしはもうお腹がペコペコだ。

おっ!向こうから誰かきたぞ!
声をかけられないように隠れていよう。

「お母さん、あれなあに?すごいね!」と子供の声。
「えっ?きゃー危ないわよ!さあ、あっちへ行きましょう」と母親の声。
親子は遠くへ行ってしまった。

ちぇっ!逃げられてしまった!
しかしなかなかひっかかってくれないなあ。
なんでだろう・・・
わしは、自分が作ったものをあらためてジッと見てみた。
キラキラと虹色に光る網。
すばらしい!美しい!最高のできばえだ!
自分でもホレボレとしてしまうほどだ。

そうか・・・
なぜみんなが声をかけてくるのかわかった気がする。
でも仕事の手を抜くことなんてわしにはできない。
この美しい網はわしの誇りだ。

それにしてもお腹が空いた・・・
今日もこの美しい網に誰もひっかからない。

ひときわキラキラ光る美しいクモの巣に、ポツンと小さなクモ。
あまりにも見事な技に、見とれるものがいても、エサになるものはいなかった。

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