都会の雑草 じいじ&ばあばホームへ


私は、ふわっと風に飛ばされてビルの谷間に降り立った。

しばらくここにいると、コンクリートの隙間から小さな芽が出てきた。
最初はここがどんなとこなのかはわからなかったが、そのまま降り立った場所で成長していった。

「何だ、こんなとこに雑草が生えてるぞ!汚いな!」と言われて涙をこらえたこともあった。
時には、歩きながら火のついたタバコを投げつけられて、焼けていくつらさを我慢していた。
また別の時には、空きビンや空きカンが投げ捨てられ、痛さに耐えた。
「ここに雑草が生えているから、始末しておいてくれ!」という声も聞こえてきた。
私は、危ない!と思った矢先にすぐにもぎ取られてしまった。

どうやら私は嫌われ者のようだ。
こんなに嫌われるのなら、雑草になんか生まれたくなかった。

そして、何日か雨が降り続いたあと、私はまたここで芽を出し、生きていた。
すると「また、生えてきた!」と声が聞こえた瞬間、大きな固いくつで踏みつけられた。
私だって生きているんだ。
風に飛ばされて偶然ここに来てしまったんだ。
私だってもう少し育てば、花が咲くし、種もなる。
そんな立派に育った姿や美しく咲く花も見ないで嫌いにならないでほしい。

もぎとられても、もぎとられても、根があるから、また生きるために頑張ってるんだ。
でも、いくら頑張っても誰も誉めてはくれない。
いつも邪魔者扱い。
都会で雑草が生きるのって大変なことなんだね。

邪魔だって言われても、自由に移動することなんかできないんだ。
風にのって降り立った場所が私達に定められた場所なんだ。
もしもどこかへ飛んで行けるなら、みんなに邪魔者扱いされない場所へ行って、一度でいいから花を咲かしたい。そして種がなって、周りに仲間が増えたら楽しいだろう。

別に花壇に植えられたいわけではない。
大事に大事に手をかけてほしいわけではない。
毎日毎日きれいだねと誉められなくてもいい。
ただ、雑草だって生きているんだ。

「また生えてきた!」
またもぎとられた。
「全くやっかいな雑草だな。」
その繰り返しで月日が過ぎていった。

私はあいかわらずビルの隙間でひっそり育っている。
でも、いつも邪魔者扱いだった私にもうれしいことがあった。
春になって私が芽を出すと、そんな私を見かけて「もう春だね。」と温かい目を向けてくれた。
そう、私はコンクリートの隙間から頑張って育っている雑草。
雑草だけど、私もきれいな花を咲かせるから、見て欲しい。

・・・無情にも春が過ぎて、私が育ってくると、また邪魔者扱いをされる。
みんなに嫌われても嫌われても私は生きていく。
痛くてもつらくても私は生きていく。
何度もぎとられても生きていく。
嫌われるために生まれたのではないけれど、いつかはこのビルの谷間に小さな花を咲かせたいというわずかな希望を持って、今日も生きている。

いつか根こそぎ抜き取られてしまうかもしれないという恐怖と不安におびえながら・・・


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