マータン王国 |
夢のような感じで、何かに吸い込まれるような感じで、土の穴の中へ中へと吸い込まれていく。 丁度、風船の入口から入っていって、あっという間にその中は大きな空間があるように、穴の中には大きな大きな国があった。 おそらく、地底深く数百キロは入っていったように思う。 そこには、門番がいて、次から次へと順番待ちしている人達。 「お前はこっち、お前はあっち」と次々と振り分けられている。 だんだん私の番に近づいてくるたびに、胸がキュッと引き締められるような感じがした。 やがて私の番がやってきた。 すると門番は「お前の来るところではない。すぐに地上に戻って、自分の家へ帰りなさい。」と言われた。 訳もわからず、何だか気分がすっきりしないまま、3日ばかりそこにいた。 そっと陰から様子を見ていると、地上で人を苦しめたり、人を泣かしたりした者には大変厳しい罰が与えられるところらしい。 私はやがてさっと目が覚めたあと、思い出した。 地底にはマータン王国といって、いまだに誰も見たことがない国があり、人を苦しめたり、泣かせた者に対しては、いくらその場で何度も何度も詫びたとしても、そのマータン王国を必ず通らなければならないという伝説がある。 「ちょっとこっちにきてみなさい。これがお前のしたことだ。よく見てみなさい。」と何かスクリーンに映っているようだ。 そのスクリーンには人を苦しめ、泣かせた姿が映っている。 そして苦しめ、泣かせた相手側がどんな苦しい思いで毎日暮らしているかが映し出されている。 「この人達はお前のためにどんなに苦しい思いをして、毎日暮らしていたのか・・・」 自分のしたことのために、この人達に、これから先もどんなつらい思いで生きていかなくてはならないのか初めてわかり、必死に地上へ戻ってもう一度やり直したいと訴える。 しかし、マータン王国では、2度と陽のあたるところへ戻すことはないといわれている。 人を苦しめた者が何故自分がこんなむごいことをしたのかと反省するのだが、マータン王国では決して許してはくれないのであった。 生きているときに人を苦しめたり、泣かせたりした者には数百年、数千年と苦しい思いをしなくてはならないということ。 生きているときは、苦しいとか、頭にきたとか、キレタとか、色々大変なことはあるが、人生は短いので、世の為、人の為、少しでも、たった一つでも良いが、人に喜ばれることをしたほうがよいということ。 「マータン王国にきた者の家族もどのような生活をしているかわかるか?家族はマータン王国にいる以上に苦しい思いや、悲しい思いをして、毎日毎日泣いて暮らしている。家族の姿もよくみておくんだ。」と何度も何度もスクリーンに映し出される。 それを見るたびになんてことをしてしまったんだと今になって思う。 家族がこんなに苦しんでいるとは思わなかった。と泣き崩れるがもうどうすることもできずに、ただただ後悔する毎日。 地上でいる以上に苦しい思いをはじめて知ることになる。 生きている時は、人は親切、やさしく、明るく接するということが大切。 せめてこのうちの一つくらいはしておいたほうが良いということ。 お金はそんなに無くても、真心を持って生きること。 マータン王国へ一度行ったら、2度と地上へ帰ることはできない。 後悔先にたたず・・・。 何かの手違いでマータン王国へ行ってしまったが、地上に戻って来れた自分の存在に感謝し、そして周りで心配そうに見守っている家族の顔を見て、幸せを実感した。 |
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