雑種のよろ吉〜その後 |
雑種のよろ吉は今ではすっかりポチと呼ばれています。 そのポチにはおばあちゃんがいることがわかりました。 ポチの住んでいるところから5kmほどいったところにおばあちゃんがいるようなのです。 ポチが近所の人達の話をたまたま聞いたのです。 「あのポチにおばあちゃんがいるんだってね」と。 それを聞いたポチも「ええ、本当に?!ポチはひとりぼっちではなかったんだ。うれしいな。おばあちゃんってどんな顔をしているのかな?夢に出てくるお母さんに似ているのかな?一度でいいからあってみたいな。」と心が騒ぎました。 しかし、早く会いたいけれど、どうしたら良いのかわからないで数日が過ぎて行きました。 ある日、ポチのご主人様の「ポチ、ポチ」と呼ぶ声が聞こえてきました。 そしてご主人様は「ポチ、私のところへ来てよかったかい?」と優しく話しかけてくれました。 ポチは「うん、もちろん!」という思いで、ワン!と吠えました。 すると、ご主人様はこう言いました。「なあ、ポチ。近所の人が話していたんだけど、ポチにおばあちゃんがいるらしいんだよ。ポチ、おばあちゃんに会いたいだろう。」 「うん、ポチはおばあちゃんに一度会って見たいよ!おばあちゃんって素敵なんだろうなあ!」と吠えました。 「そうか、ポチ会って見たいか。それにポチのおばあちゃんだからきっと素敵に違いないよ。」とご主人様は微笑みました。 「それじゃあ近いうちに私と一緒におばあちゃんを探しにいこうか。」 「ウン。おばあちゃんに会いたい」 そして数日後、ご主人様とポチは5kmほど離れたところへ行って、いろんな人に聞いてみました。 「すみません、このポチに似た犬を探しているのですが・・・」 しかし、数時間たってもなかなか見つかりませんでした。 あきらめかけた頃のことでした。 通りすがりの人に同じように聞いてみました。 すると「ああ、そっくりな犬を知っているよ。ここから川を渡って、山を一つ越えたところの向こう側にいると思うよ。」と話してくれました。 言われたとおりに川を渡り、山を越えると、農家の大きな家がたっておりました。 そしてそこにはおばあちゃんらしき犬が家を守っておりました。 ポチはその犬がおばあちゃんかなと思いながらクンクンとあたりのにおいをかぎました。 そしてポチは少しずつその犬に近づいていきました。 すると、その犬は「あれ?私の娘によく似ているが・・・娘ではなさそうだし・・・もしかしたら私の孫かもしれない。クンクン。やはり娘と同じにおいがする。これは私の孫に違いない。」と確信してポチを見つめました。 ポチも「クンクン。お母さんと同じにおいがする。顔もそっくりだ。おばあちゃんだ!」と確信して、おばあちゃんに近づきました。 「お母さん!お母さん!」ポチはおばあちゃんがあまりにもお母さんにそっくりだったので思わずそう言ってしまいました。 そしておばあちゃんのそばへいくとおばあちゃんは涙を流して言いました。 「私の孫だね。お母さんにそっくりだよ。ひとりできたの?お母さんは元気なの?」 ポチはどう説明したらよいかわからなかったので、ただ涙を浮かべて、おばあちゃんのそばへほほをつけて泣き崩れました。 そんなポチの姿を見て、おばあちゃんはお母さんがもういないということを察しました。 そして泣いているポチを優しく包み込みました。 ポチはお母さんとおんなじにおいのおばあちゃんに包まれて、幸せな気持ちになりました。 涙で言葉などほとんど交わすことはありませんでしたが、ポチとおばあちゃんは心と心で通じあっていました。 おばあちゃんはポチに「ちゃんとご主人様のために一生懸命にお家を守ってあげてね。元気でね。」とほほを寄せて言いました。 とても短い時間でしたが、ポチはおばあちゃんに会えたことを大変うれしく思いました。 そしてこれが夢ではないかと何度も何度もほほをつねってみたりもしましたが、夢ではありませんでした。 とても幸せな気分でご主人様と一緒に家路につきました。 ご主人様は「ポチ、おばあちゃんに会えて良かったね。それにしてもおばあちゃんとポチはそっくりだったね。」と優しく言いました。 ポチはこんな優しいご主人様にとても感謝するのでした。「ありがとう、ありがとう」 そして、温かいご主人様の家族に会って、おばあちゃんに会えたことを話したいという気持ちでいっぱいでした。 数時間かかってようやく家へたどりつくと、優しい顔をしたご主人様のおばちゃんがポチの頭を「いいこ、いいこ」となでてくれました。 「ポチ、疲れただろう。ポチの大好きなお肉だよ。そうか、おばあちゃんに会えたんだね。良かった。良かった。」 ポチはこんな優しいご主人様のお家へこれてよかったと心の底から思いました。 そして、これからも優しいご主人様の家族のお役にたてるように、毎日家を守って行こうと誓いました。 |
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