へ島ツルリン村−腹にためるな− じいじ&ばあばホームへ
太平洋上に浮かぶ「はげ山諸島へ島ツルリン村」でのお話です。

船が嵐に会い、1週間ほどして流れついたところは、キラリ、ピカッと光る小さな島でした。
やっと流れついたせいか、目がまぶしいやら何やらで、何とか島に上陸しました。

すると、お祭り騒ぎでもしているような賑わった様子が伝わってきたので、陰からこっそり見ていました。
そしておそるおそるその賑わいの中に近寄っていくと、皆ニコニコしています。
あまりにも皆笑顔なので、不思議な島に上陸してしまったなと思っていました。

すると、島の人達が私を見つけて近くにやってきました。
そして不思議そうに私の顔を見ていました。
どうして笑っていないのだろうといっているようでした。
その時私は自分の顔がこおばっているのに気づきました。
私ははじめて見る光景に驚いていました。

しかし、6、7人の人が「ぶー、プー、ぴー、ぴすっ」と屁をしてニコニコしています。
私はなんと失礼な人達だと思いました。
しかし、あまりにも気にせずに「ブー、ピー」と屁をしているので、「・・・フフッ」と思わずふきだしそうになり、いつのまにか笑顔になっていました。

まわりの人達はこれで良かったと言っているようで、笑顔が一番、笑顔が一番と楽しい様子です。
この島の人達の言葉はよくわからなかったけれど、身振り手振りでなんとか、私が流れついたところは地図にも載っていない「はげ山諸島へ島のツルリン村」であることがわかりました。

この島は戦、争いごとや頭にきたり、キレたりすることのない場所らしいです。
島の中のちょっとした街の中を歩いていても、あっちこっちピカピカ輝いていて、まるですべっているかのようになめらかに歩くことができてとても気持ちがよいのです。

しばらく歩いていると一軒のスーパーがありました。
大勢の人達が買い物をしていました。
精算するためにレジでたくさんの人たちが並んでいましたが、誰一人順番待ちにイライラしている様子はなく、ニコニコしています。
買い物することも生活の一部、レジで待っていることも生活の一部、こうして一部一部をすべて楽しむことで、1日の暮らしを楽しく過ごしているようです。
レジで待っている間もやはりあの音が聞こえてきます。
あっちこっちで「ぷ〜、ぶ〜、ぴぃ、ぷす」と・・・
皆これを聞いてニコニコ顔です。
見ている私まで楽しくなってしまいます。
レジの人が買い物を追えたお客様に「ありがとう、プー」、お客様も「どうもありがとう、プス」と、感謝の気持ちを表している。

私が今までいた世界ではこのようなことは考えられないが、誰一人そんな状況を不信に思わないし、不満に思っていないようです。

スーパーをあとにして、再び街を歩いていると、知り合い同志が出会うと「今日もいい天気ですね。」と言うようにお互いに「ピー、プー」と挨拶しています。
おしゃべりを終えて別れるときも、「では、また」と言うように「ぶー、ピー」と挨拶しています。
この変わった光景を見ていて、何故こんなに感じがいいのか、こんなに気持ちがいいのか、不思議でした。
たぶん私が今までいた世界ではこういう挨拶は社交事例とか義理とかお互いに「本当は急いでいるのに」とか腹の中では別のことを考えイライラしているから、たとえ丁寧な言葉を交わしていたとしてもあまりいい感じがしなかったのかもしれません。
この島に頭にくる人やキレる人がいないという訳がよくわかった気がしました。
そう思うと、急に力が抜けて私も思わず「プスッ」、すると周りのみんなは笑顔です。
その笑顔を見て私も笑顔になり、自分がいつも笑顔にかけていることにようやく気が付きました。
この島に流れ着いて、「あなたには笑顔がない、腹にためているからそれが良くない、人間固すぎるとダメ、もっと力を抜いて、笑顔でね。」と、笑顔のすばらしさを初めて教えられました。

この島はすばらしいけれど、私にも家族がいるし、心配しているだろう、そろそろ国へ帰りたいと島の人に言いました。

それから数日後沖行く船を発見した5、6人の人達がいっせいに船に向って頭を下げていました。
何をしているのかと思っていたら、ツルピカの頭が光って船に知らせる合図となり、へ島へ船をつけてくれました。
そしてこの船で国へ帰ることになり、へ島の人達にお別れをしました。
島の人達は別れを惜しむ気持ちとともに、この島のことを私の国にも広めてくださいと涙をこぼしながら話してくれました。
あっちこっちでも、「ではさようなら、またいつかきてください」と「ブ、プ、ピィ、プス」と色々な音色で別れを惜しんでくれました。
私も「ありがとう」と「ブゥ、ブゥ」とお礼と別れをつげて島を離れました。

それから2週間ほどたってやっと国へ帰ることができました。
懐かしいという思いよりも、街の中を歩く人達に笑顔がないことに気が付き、驚きました。
とても変な感じがしました。
この雰囲気の中では、頭にくる人やいじめる人、きれる人がいるわけだと納得しました。
そして私は、ツルリン村のことを思い出し、「ブー、ピー、プー」としてみました。
すると通る人が「嫌だわ!」とか言ってにらみ付けたりしていましたが、また「ぴぷーぶ」としたら、あちらこちらで「ふふ・・」と笑い声が聞こえてきて、みんな笑顔になっていました。
まるで赤ちゃんのような、けがれていない顔をしていました。
その笑顔を見ていたら、これこそ本当の笑顔だと思い、本当にうれしくなりました。

きっと人は、思ったことを腹にためこみ、何も言えずにいたり、一人で考え込んだりするから、それがたまり、頭にくることや、キレたりすることがあるのでしょう。
笑顔は決してお金で買うことはできません。
不満などはためないで、腹から出してしまいましょう。
あっ、ぶー、プスッ。
すっきりした。
今日も1日我慢しないでブッ、ピー、プス。
みんなもそれを聞いて今日もニコニコして笑っています。
みんなも腹にためないで出しましょう。
気分がいいはず、すっきりするはず・・・

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