隠れた田舎は文明だった じいじ&ばあばホームへ
「おお、旅人よ!目が覚めたか。」
「ううん・・どうしたんだ。」
「何あたりを見まわしているんだ。どうかしたのか?」
「あれ?ここはどこですか?」
「何をいっているんだね。旅人は1週間前にこの先で倒れていたんではないか。」
「ええ?倒れてた。」

「旅人よ、なんでこんな山奥まで入ってきたんだ。」
「私には何がなんだかよくわかりません。一体ここはどこですか?」
「・・ここかね、ここは山奥じゃ。山奥といっても人も入ってこられないようなところじゃ」
「場所は?」
「場所は、全体的には地図のなかのどこかではあるんだろうが、なにせここは今だ人が入り込んだことがないところじゃから。いったい何という県にあたるのかよくわからんのじゃよ。ただ山奥だということだけはよく知っとる。それにここから他のところへも行ったことがないから余計によくわからんのじゃよ。」

「・・・ちょっとあたりをみせてもらってもいいですか?」
「ああいいよ。よくみてみるがいい。」
「うわ〜!この木は随分大きいものですね。50m、いや70mくらいはありそうですね。こんなに大きな木があるから日が入ってこないんでしょうね。」
「何をいっているんだね、旅人よ。日はこの大木が受けて、おら達を守ってくれるんだよ。まあいい。それじゃあ、そろそろおらの村へ案内するから。」
「・・・ええ、お願いします。」

「これがおらの家だ。」
「ほう、これが・・・」心の中では「これが家か?!やっぱり田舎の家だな。」と旅人は思っていた。

しかし中へ入って驚いた。
なんと家の中は文明社会という感じで、見たことのない、何がなんだかさっぱりわからない様子だった。
家の中は電気があるわけでもないのに、なぜこんなに明るいのか?
こんな大木の下にあるのになぜ明るいのか?
不思議でならない。

旅人は尋ねた。「なぜ明るいのですか?」と。
「なぜっていわれても、もう800年前からこうだっていう話しだよ。」
「電気ですか?」
「電気ってなんだい?おらにはよくわからん。」
「じゃあ、なんでですか?」
「それは太陽様から大木にこんこんと照りそそいだおめぐみを大木がありがたや、ありがたやと地面までそそいでくれて、地熱となって、それが自然に光を発するらしいのじゃよ。」

「・・・これは、テレビですよね?」
「テレビってなんだい?ああ、これか。これは自分の行きたいところに行くことができるんだよ。」
「・・・?」
「ほら、スイッチでも入れてみるか。」

スイッチが入ったらさらにびっくりやはりテレビではなかった。
なんと中に人がいる。
中の人がおじさんに「いつも元気でいいね。」と声をかける。
おじさんもテレビのようなものの中に入っていった。
あれ?どこにいったんだろうと思っていたら、数分後おじさんが「おお旅人よ。腹が減っているのではないか?」と食べ物を持って、テレビのようなものの中から声をかけてきた。
「ほら食べろや。」とおじさんがテレビのようなものの中から出てきた。
これまたびっくりした。
「こ、この放送は、日本で放送されているのですか?」
「これか、これはこの村だけのもんだろうな。どうしてだい?」

「ああ、驚いてしまって・・・あ、あの、電話ってありませんか?私が元気でいることを家族に連絡したいんです。」
「そうか、家族が心配しているだろうな。今のこの時代で電話って変なことを言う旅人だ。家族と連絡とるんだったらこれ使え。」
「なんですか?」なんだろうと思ってみたら、じょうごみたいな形をしたものでどうやって使うのかわからなかった。
「さ、使え。」
「使えといわれても、どうやって使うんですか?」
おじさんが黙っていたので、じょうごのようなものの口のようなところをよく見てみたら、なんとそこには旅人の家があるではないか!!

そして笑顔で家族が言った。「パパどうしたの?何日も連絡しないで、何かあったのかと思って心配したわ。」
旅人は「え〜、なんだこれは!?家族がいる!!」と叫んだ。
すると家族は「パパ何考えているの?頭おかしくなったんじゃないの?」と。
「い、いや、別に・・・ただ、不思議でどうしようもないんだ。ママこっちにこれるのかい?」
「行きたいけど、住所がわからないわ。」
「じゃあ、ちょっと待っててね。今おじさんに聞いてみるから。」

旅人はおじさんにたずねる。「あの、この場所の住所を教えてくださいませんか?」
「なに?ここにきたいのか?だったら、すぐこいよ!といえばすぐにこれるさ。」
「えっ?何を言えばいいんですか?どこを押せばいいんですか?」
「どこを押すとかじゃなくて、おらの言ったとおりにすればいいんだ。早く会いたいんだろう。それなら、早く言えばいいじゃないか。ただ呼ぶだけでいいんだよ。」
「・・・」
「何不思議な顔してるんだ。早くしたら。」

「ええ、わかりました。・・・それじゃあ、ママここに来てね。」
すると、じょうごの入口みたいなところからひょっこりとママが出てきた。
あれ?夢でも見ているのかな?と思い「ママかい?」と聞くと「パパ何言ってるの?パパが呼んだから来たんじゃないの。」とママは言う。
「じゃあ、ママどうやってきたの?」
「・・・なんだかよくわからないけど・・・ここにいるのも夢を見ているみたいだわ。パパ、ここはどこなの?」
「パパもわからないんだ。あ、この方はパパを助けてくれたんだよ。ママからもお礼を言ってあげて。」
「ああ、そうだったんですか。パパを助けていただき本当にありがとうございます。」

「ママ、何でここにいるのかも不思議だけど、みてごらんこんな山奥の中にすばらしい文化があるんだ。」
「え〜!本当なんだかよくわからないけれど、見たことない感じのものばかりあるわね。ところで、おじさん、若く見えますけどおいくつですか?」
「何才だって?男に年を聞くもんじゃないよ。ここでは年は女に聞くもんだよ。」
「ええ?そうなんですか。私達のところとは反対だわ。」
「まあいい、おらは特別だから教えるけど・・・えーと、何才だったかな。今年で800才は超えたように思うが・・・」
「はっ?!800才?このおじさん頭がおかしいんじゃないの?」と心の中で思っていた。
今度はおじさんが私に年を聞いたので45才だというとおじさんは「ほー、まだ45才かね。あと1000年は生きれるね。」という。

全くおかしな話しだ。

急にお腹が減ってきて、さっきもってきてくれた食べ物が欲しいとおじさんに言った。
「ああ、忘れとった。これじゃ。」と一握りの固形のものを手渡された。
「おじさんの分は?」と聞くと、「ああ、今は食べなくてもいいんだ。」という。
「何故ですか?」と聞くと、「これを食べると1ヶ月は物を食べなくてもいいんだよ。」という。
こんなちっぽけなもので1ヶ月ももつわけがないと変に思った。

変なことだらけで、何もかもすっきりしない。

話題を変えて、おじさんの家族のことを聞いてみた。
「ああ、家族はね。ちょっと出かけてるよ。」
「町にでもでかけたんですか?」と聞いてみた。
するとおじさんは「ははは」と笑い「町じゃあないよ。ちょっこら、火星まで遊びに行ったんだよ。」
旅人は「火星っていう地名ですか?」とまじめな顔をしてたずねた。
「何?火星も知らんのかね?ほら空をみてごらん。あの宇宙にある火星だよ。」
「えっ?どうやっていくんですか?」
「そんなの簡単だよ。じゃあおまえさん達もちょっこら行ってみるか?」
「な、何を夢みたいなこというんですか?」
「火星に行って、帰ってきたってせいぜい2時間もあれば見物してこれるだろうさ。さあ、ここに座ってみい。」
わけもわからず旅人とその妻は言われたとおりに座った。

すると、目の前に大きな画面のようなものが映ったと思ったら、その途端に旅人とその妻は画面の中へすいこまれてしまった。
そして二人はあっという間に宇宙に飛び立っていることに気づいた。
その地球の美しいことに思わずうっとりしていたのもつかの間で10分ほどで火星についた。
夢ではないかとほっぺたをつねってみたが、ほっぺたは痛い。夢ではないようだ。
着いたはいいが、もう火星から帰ることができないものだとあきらめていた。
すると、急におじさんの声が聞こえてきた。「どうだ。楽しんでるか?そろそろ帰るか?」
思わず「はい、帰りたいです。」と返事をした。
「そんじゃあ、そうするか」とおじさんが言うとともに、また火星でも目の前に大きな画面のようなものが出てきた。
「じゃあ、座れ」とおじさんが言う。
二人は言われたとおり座るとふんわりとした変な感じがしたが、地球から火星にくるときよりも気分的に少しは楽に感じた。
火星から地球に向う間は目を見張るばかりのすばらしい銀世界のような、口ではちょっと説明ができないほど美しい光景だった。
そして10分ほどでおじさんのところへ戻ることができた。

するとおじさんの家には火星に出かけていた家族が帰ってきていた。
「ああ、あなた達ですね。お客さんって。火星はどうでしたか?」
「ええ、まるで夢でも見ているような感じで、一口で話すには無理なくらい、あまりにも美しかったです。本当になんと表現していいやら・・・」
「そうでしょう。そうでしょう。」

「いろいろとお世話になりましたが、そろそろ私達も帰らなくてはなりませんので、どのようにして帰ったらよいか教えていただけませんか?」とたずねた。
「何?もう帰るのか?それじゃあ、送り届けるから心配するな。」
「ありがとうございます。」

「ところで、おらのお願いだけど、今まであんた達が経験したことを町に帰ってから話したって無駄だよ。あんた達の世界の人たちはそんなばかなとか、何を言っているんだ、あの家族は頭がおかしいとか、うそつき、信用できないとか、ひどいことを言われるのが関の山だからね。なんにもなかったと思って、自分達の胸の中へしまっておいたほうがあんたたちのためだよ。 あんた達の世界もおらの村みたいになるのもそう遠くはないだろうしな。 じゃあ、さっき火星に行ったときに座ったところに、座って」

旅人とその妻が座るとおじさんは「じゃあ、元気でな」とボタンをポンと押した。
自分達の家に着いたのはほんの数分後だった。

まったく不思議なことがあるものだ。
あんな山奥の田舎で、あんなすばらしい文明があるとは。
それも800年以上も前からあるというのだからすごいものだ。
文明って一体何なんだろうか?
不思議な世界を見せてもらった。

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