目覚し時計 |
タダハル!起きるんだ!! タダハル!早く起きるんだ!! ・・・ なんだよ〜、朝6時に起せって言ったくせに!! 何で起きないんだ!! もう1回だけ言うぞ! タダハル!起きろ〜!! ・・・ やっぱり起きないよ。もうぼくは知らないよ! 知らないよ〜だ!! でも何でこんなに言っても起きないんだろう? もう考えてもしょうがない、もう知らない!! ぼくのせいにだけはしないでよね!! あっ、ぼくは目覚まし時計です。 タダハルは6時になったら起してくれって言って、ぼくのタイマーを6時に合わせていたのにね。 今日は何でも朝6時に起きて、野球の早朝練習にいくつもりだったらしいんだけど。 ぼくにはさんざん忘れないで絶対起してくれ!って頼んでいたのに。 もう今日は野球の早朝練習には間に合わないだろうね。 まったくタダハルは目が覚めたら必ずっていいほど、ぼくのせいにするんだよ。 目覚まし時計のお前が悪い!っていいがかりをつけてくるんだよ。 タダハルには、本当に困ったもんだよ。 でもタダハルだけじゃないんだよね。 タダハルの姉ちゃんのユキちゃんも似たようなもんさ。 夕べ遅くに帰ってきたのに、明日6時30分に起してね!と勝手なことをいうんだ。 起きてくれればいいんだけど、ユキちゃんもちょっとやそっとのことじゃあ起きないんだ。 毎日会社に遅れそうになって、ぼくにばかりやつあたりするんだよ。 なによ、この目覚まし時計は!ちゃんと鳴ったの〜!?壊れてるんじゃないの?なんて言う。 全く心外だね。 このぼくが朝寝坊するわけないのに! この家にはタダハルとユキちゃんの他にもう一人困った人がいる。 ・・・お父さんだよ。 昨夜もお父さんはお酒を飲んできて、夜中に帰ってきては叫びちらしていたよ。 飲み足りないから酒を出せ!とか、ビール持ってこい!とか、わがままなこと言ってお母さんを困らせていたよ。 お母さんが心配して「お父さん、そんなに飲むと、明日お仕事出来なくなってしまうわよ。もうこの辺で終りにしたら」と言うのだけど、聞いちゃいないよ。 「もう一杯だけ飲んだらやめるよ」と言うから、しょうがなくお母さんがもう一杯だけ持ってくるんだけど それが繰り返すこと5、6回・・・ お母さんもさすがに不安になって「明日本当に大丈夫?」と聞くと、お父さんは「ああ大丈夫だ、心配するな。」と言う。 そしてぼくのタイマを朝5時にセットする。 ぼくはどうせ起きないだろうとは思うけど、言われたとおり5時にお父さんを起そうとする。 でも、ちゃんと5時に起きることはないね。 そしてまた始まったよ。 とっくに会社に間に合わない時間にようやく起きてきて、あわてて会社にお母さんから電話させるんだ。 お母さんも慣れたもんだよ。 電話するたびにいろいろ理由が出てくる。 「主人の体調がすぐれなくて・・・」とか、「風邪をひいてしまって・・・」とか、「田舎の父親が危篤で・・・」とか言う。 こうして、お父さんは結局会社を休むんだ。 何度田舎の父親が危篤になったことかわからないよ。 実際に危篤になったって話しは聞いたことないからね。 本当に困った家族だよ。 こんなお父さんでも言うことだけは一人前なんだ。 子供の教育はこうでないと、ああでないと、・・・などなど、いかにも自分が立派な大人のお手本のような口ぶりで言う。 笑っちゃうよ。 何でぼくは、こんな困った家族のところへ来てしまったんだろうか。 毎朝みんなを起すのにとっても疲れるよ。 目覚まし時計の苦労をわかったことがあるんだろうか。 一回くらいはわざと間違った時間に起こして見ようかな。 きっと大慌てだな。 想像しただけでもおもしろいね。 それは冗談だけど、たまには起してくれてありがとう!って言ってほしいんだけどなあ。 |
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