ポンコロ村の腹つづみ |
ここは、信州の山奥にあるポンコロ村です。 ポンコロ村は腹つづみで評判です。 今からおよそ数百年前から、祭りといえば「ポンコロ村の腹つづみ大会」と各方面に知れ渡っているほどでした。 野を越え、山を越え、信州一帯に響き渡る腹つづみの音。 一番響き渡る音を出せるのは、うわさのポン造じいさんでした。 まだ子供のゴロ八やポン助も、毎日ポン造じいさんに追いつくように頑張っているが、まだまだ足元には及びません。 なにせ、ポン造じいさんのお腹の張り具合といったら、すばらしいものです。 腹つづみ数十年のキャリアがあり、まだまだ若造には負けるわけにはいかないと毎日毎日その腹つづみに磨きをかけていました。 今年もあと1週間後には、ポンコロ村名物の腹つづみ大会が行われます。 若い衆や子供達は、毎日毎日ポン造じいさんのうでを越せるように努力していますが、なかなかポン造じいさんのようにはいきません。 ゴロ八もポン助もお腹の張り具合がいまひとつ悪いようです。 ポン造じいさんとどこが違うのかと、よ〜くじいさんを見ているのですが、何が違うのかすらいまだにわかっておりません。 そんな若い衆や子供達のあせる気持ちをよそに、ポン造じいさんは気持ち良さそうに腹つづみを響かせます。 「はあ〜!よい!ポポン、ポポン!」 その響きは10km先まで届きます。 その音を聞いて、10km先の人達は、「今年もポンコロ村のお祭りが近いわね。」とみんな胸をワクワクさせます。 祭りが近づくと、練習する音があちこちから聞こえてきます。 「あっ、あの音は若造のポン助だわ。」 「こっちの音はゴロ八の音だな。」 「これはポン造じいさんの音だ!まだまだポン造じいさんに勝てる者はいそうにないな」 と口々に話しています。 そして、森や村の動物たちでさえも口々にポン造じいさんにかなうものはいないと噂しています。 ポン造じいさんはただ勝つことだけを願っているのではありませんでした。 本当は自分はもう年だから、早く若い衆や子供達に追いついてもらい、追いこしてもらいたいと願っていました。 そんなポン造じいさんの気持ちを知ってか、知らぬか、若造たちも毎日毎日練習に励みました。 日がたつごとに、人々も動物たちもその音が誰のものかだんだん判断できなくなるほどでした。 そしてとうとうポンコロ村の腹つづみ大会の日がやってきました。 朝からお天気も良く、大会には絶好の日よりとなりました。 楽しみにしていた人里の人間たちも3日前から、野を越え、山を越え、山奥のポンコロ村のそばまで腹つづみ大会の音を聞きに来ていました。 「さあ、最初の方!」 「ポン、ポン、ポン!」 「では、次の方!」 「ポン、ポン、ポン!」 「はい、次の方!」 「ポン、ポン、ポン!」 ・・・誰の腹つづみの音だかさっぱりわかりません。 これはどうしたことでしょうか。 どうやら練習の成果が表れたようです。 すっかり若造たちはポン造じいさんに追い付いてしまいました。 ポン造じいさんはさびしい気持ちもありましたが、後継ぎができてほっとしたようです。 そして、みんなも美しい音色を聞いてうっとりした1日を過ごすことができました。 そして、数年後には人里にはすっかり腹つづみの音が聞こえなくなってしまいました。 それは以前からポンコロ村でも恐れられていたことでした。 いずれは腹つづみの音をみんなに聞かせることができなくなるのではと・・・ 昔から緑あふれるこの山奥がここ数年の間に人間が開発と称し、次々と切り開いてしまっていたのです。 透き通った空気もにごり始めたため、音が遠くまで響かなくなってしまったようです。 人間も動物も関係無く長年楽しまれてきた「ポンコロ村の腹つづみ大会」でしたが、人間の手によりポンコロ村の伝統が壊され、自然までも壊され、お祭りだけではなく、明日のポンコロ村の存続すらあやういような状態となってしまいました。 元の緑いっぱいの環境が戻れば、またポンコロ村の腹つづみの音色も響き渡る日が戻ってくるかもしれませんよ。 |
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