ママとの約束 じいじ&ばあばホームへ
「ねえ、パパ〜。ママはいつ帰ってくるの〜?」

パパは一瞬答えに困った。
「・・・なっちゃん。ママねえ、もう帰ってこないんだよ。」

「そんなことないよ〜!」

「なっちゃん、本当にもう帰ってこないんだよ。」

「どうして?」

「ママは、お星様になってパパやなっちゃんをお空から見ているんだよ。」

「ちがうよ〜!ママは帰ってくるよ〜!」

「・・・」

「だって、ママはなっちゃんと約束したんだよう!」

「約束?」

「なっちゃん、三つの時にママと指きりしたの今でもちゃんと覚えているもん。」

「・・・ママと何を約束したの?」

「ママねえ、『なっちゃん、あと1ヶ月もしたら帰ってくるから、パパと一緒にいい子で待っているんだよ。』って、なっちゃんの頭をいい子いい子してくれたんだもん。ママと約束したんだもん!」

「そうか、でもなっちゃん、パパ、うそは言わないよ。」

「・・・ふん。それなら、なっちゃんお星様のママの所へお手紙書く!」

「なっちゃんは、もう字が書けるの?」

「うん、書けるよ!お星様の絵も描くんだ!」

「・・・なっちゃんがお手紙書いてもママのところへは届かないんだよ。」

「届くよ〜!だってポストに入れたら郵便屋さんがちゃんと持っていってくれるもん!」

「なっちゃん、郵便屋さんが困っちゃうよ」

「・・・じゃあ、ママのところにお電話する!」

「なっちゃん、無理だよ・・・もうママは死んじゃったんだよ。」

「うそだー!だって、なっちゃんママとちゃんと約束したんだもん。必ず帰ってくるって言ってたもん! 『なっちゃん、ママが帰ってくるまでおりこうでお留守番できるかな?お留守番できないとママ悲しくなるからね。なっちゃん、ちゃんとお留守番できるよね?』って。
なっちゃん、できるっって約束したもん。ママは帰ってくるんだ!」

パパは、大変困ってしまいました。
なんてなっちゃんに言ったらわかってもらえるのか、もう自分自身わからなくなってしまったのです。
できることならば、なっちゃんとママとの約束を実現させてあげたいと思うけれど、それは無理な話です。
なっちゃんももう少し大きくなればわかってくれるとは思いますが・・・

なっちゃんは心の淋しさを埋めるかのように、ママとの約束を信じ、毎日毎日ママの帰る日を待っているのです。

ママがいなくなってから早3年の月日がたちました。
なっちゃんもママがいなくて淋しいと口に出して言わなくなりましたが、パパにはママの代わりがきかないことはパパ自身がよくわかっていました。
なっちゃんもそんなパパを悲しませないようにパパの前ではママのことは口にしませんでした。
でも夜になってキラキラ光るお星様を見ては一人涙を流しているなっちゃんでした。
どんなに涙をこぼしても、パパに会うときは涙をふいて何事もなかったような顔で笑うようにしています。

パパとはいつもその日にあったことをお互いに話し、パパと娘二人仲良く幸せに生活を楽しんでいます。

来年の3月には、なっちゃんも小学校に入学します。

パパは毎日大変です。
仕事に行く前になっちゃんを保育園にあずけ、仕事が終ったらすぐに家へ帰ります。
それはなっちゃんと過ごす時間を少しでも多くしたかったからです。

なっちゃんもパパが料理を作るお手伝いをしたり、一緒にご飯を食べるようにしています。
そして食事をしながら、必ずその日あったことを話し合うことで親子のふれあいを大事にしています。

クリスマスが近くなった頃のことです。

「パパ〜、クリスマスにはなっちゃんのところへサンタさんくるかな?何を持ってきてくれるかな?」

「もちろん、くるさ。なっちゃんが欲しいものをサンタさんにお願いしてごらん。」

「うん、なっちゃんねえ、お人形さんが欲しい!!」

「そう、じゃあサンタさんにちゃんとお願いしておくんだよ。きっとクリスマスにはお人形を持ってきてくれるよ。」

「うん!」

そしてクリスマスの前夜、なっちゃんは朝から落ち着きません。

「ねえ、パパ。サンタさん来てくれるかなあ?早く朝にならないかなあ?お人形を持ってきてくれるとうれしいねえ。まだかな、まだかな。」

そしてクリスマスの朝になりました。
なっちゃんが目覚めると、枕元にお人形が置いてありました。

「わ〜い!サンタさんがきたよ〜!パパ〜!パパ〜!」

「どうした、なっちゃん。」

「ねえねえ、サンタさんが来たよ。なっちゃんのところにお人形を持ってきてくれたよ!ほらあ」

「どれどれ、本当だ!良かったね、なっちゃん。なっちゃんがいい子にしてるから、サンタさんがお願い聞いてくれたんだね。」

「うん!なっちゃんいい子にしてたから!うれしい!サンタさん、ありがとう!パパ、パパのところにはサンタさん来たの?」

「いいや、パパのところへはこなかったよ。」

「そっかあ、きっとパパのところ忘れてたんだね。かわいそうだね。」

「そんなことないよ、パパはもう大人だから、サンタさんも欲しいものは自分で働いて買いなさいって。」

「ふ〜ん、大人になるとサンタさんは来てくれないんだ。ちょっと寂しいね。」

「そうでもないよ、なっちゃんがいるから寂しくなんかないよ。」

「パパ・・・。なっちゃんもパパがいるから寂しくないよ。」

「ありがとう、なっちゃん。」

「うん。そうだ、パパ。もうすぐお正月でしょう。お正月になったら、お餅食べて、カルタして遊ぼうね!」

「うん、そうだね。神社さんにお参りに行こうか!なっちゃんとパパが元気でいることに感謝しなくちゃな。そして来年もよろしくって。」

「うん。それに、来年はなっちゃんも小学生だから、お勉強頑張りますって約束してくるね。」

「そうだね、なっちゃんも、もう小学生か・・・なっちゃん小学校に行きたいか?」

「うん、早く学校に行きたい!なっちゃん、いっぱいお勉強してケーキ屋さんになるんだ!」

「へえ、ケーキ屋さんになるの?」

「うん、だってパパ、ケーキ好きでしょう。ケーキ屋さんになって、おいしいケーキを食べさせてあげるからね。」

「なっちゃん、ありがとう。パパ、うれしいよ。・・・楽しみにしてるから。」

「うん、まかしておいて!」

パパはその日窓から夜空を眺めていました。
お星様になったママにこっそり報告です。
「なっちゃんがママに会いたいって泣かなくなったよ。
小学校に行っていっぱい勉強したいって。
そして、パパのためにケーキ屋さんになりたいって言ってくれたよ。」
パパの目には涙があふれそうで、キラキラと輝き、夜空のお星様のようにきれいでした。

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