買い物はきらい! じいじ&ばあばホームへ
ママ
「パパ〜、そろそろ買い物に行かない?」

パパ
「なに〜、買い物?スーパーに行くのかい?」

ママ
「ええ」

パパ
「パパはもう買い物行くのは嫌だね!買い物行ってもおもしろくないし!ママは買い物好きなのかい?」

ママ
「ママだって、パパとおんなじよ。行くのは面倒だし、行ってもたいしておもしろくもないし・・・」

パパ
「本当?このあいだだってママ開店から閉店時間までずっとスーパーにいたじゃない?」

ママ
「ママのことばっかり言わないでよ!パパだってスーパーのすみっこで身動きもせずにずっと座って閉店時間になってお客さんがいなくなり始めたときあわてて店から出てきたじゃない!」

パパ
「おお、そうだったかね。」

ママ
「でもあのときは大変な思いだったわね。皆に何言われるかわからないからね。パパはすぐ頭にくるから気をつけたほうがいいわよ。」

パパ
「ああ、わかってる。店員が何言っても聞こえないふりして我慢してるのも一つの手だって最近わかったよ。」

パパ
「今日はスーパーじゃなくて個人のお店に行ってみるか?」

ママ
「そうねえ、個人のお店の方がきっと親切でやさしくしてくれるかもしれないわね。でもパパ気をつけてね。すぐに頭に血がのぼるから。それだけはお願いします。」

パパ
「ああ、わかったよ。じゃあ、急がずボチボチと散歩でもしながら行くか。」

パパ
「あ〜、ずいぶん歩いたな。」

ママ
「そうね。一時間くらい歩いたかしら。帰りは荷物もあるし大変ねえ。」

パパ
「せっかくここまできたから、もう少し頑張って行くか」

ママ
「ええ、そうね。」

ママ
「あら、あそこにお店やさんがあるわ。」

パパ
「ああ、本当だ。きっとこういう店はお客さんに親切に対応してくれるだろうな。」

ママ
「パパ、何度も言うけど、絶対に何を言われてもガマンが大事だからね。お願いよ。」

パパ
「ああ、わかってる。」

パパ
「何があるのかな?」

ママ
「パパはそっち側で何か欲しいものがあるか見ててね。ママはこっち側を見てるから。」

パパ
「小さな店だけど、けっこう品数が豊富でいいねえ。」

ママ
「ええ、これだけ品数があればここ1軒だけで買い物の用が足りそうね。あれ?お店の人がこっちの方にくるわ。何か用かしら。」

店の主人らしき人とおかみさんらしき人が何やらひそひそと会話をしています。

店の主人
「今、お客が来たようだけど何か様子がおかしくないか?」

おかみさん
「ええ、何だか二手にわかれていったわ。」

店の主人
「あの客から目を離すなよ。ちょっと見てくるから。」

パパ
「あっ、店の人がきたよ。何を言われてもじっとしてなくちゃ。」

店の主人がチラチラと様子を見ています。

そしてまたおかみさんのところへ戻って何か話しをしています。

店の主人
「何だかおれがいくと急に手足をひっこめて、首まですくめているよ。」

おかみさん
「おかしいわね。」

店の主人
「何にも知りません、してません。みたいな感じでかえってあやしいなあ。もう1回行って見るよ。」

パパ
「あっ、また来た。じっと黙ってないといけないな。」
また店の主人がチラチラと様子を見ています。

そしておかみさんのところへ戻って話しました。
店の主人
「やっぱりおかしいよ。やけに警戒しているよ。」

おかみさん
「最初から二手に分かれているのも変だしね。」

店の主人
「行けば知らんふりして、じっとしてるし。」

おかみさん
「もう少し私達も知らないふりして様子をみましょうか。」

店の主人
「そうだな。見ないふりしてよく見てよう。」

しばらく店の主人とおかみさんは二人の様子をこっそり見ていました。

店の主人
「どう考えてもあやしいなあ。ほら、みてごらんよ。急に背伸びして何かのぞきこんでるよ。」

おかみさん
「ううん、でもただ品物見てるだけかもしれないわよ。」

店の主人
「もしかしたら、すきをねらって盗もうとでも思ってるのかもしれないぞ。なあ、今度はお前がそばに行って何気に見てろ!」

おかみさん
「ええ、わかったわ。」

今度は店のおかみさんが近くに寄ってきました。

パパ
「あっ、今度はおかみさんかあ。なんだろう何回もおれのそばにきて。でも頭にきちゃいけないんだ。じっとしてなくちゃ。」

おかみさんは、品物を整理するふりをしてチラチラと様子を伺っていました。
少ししてから、店の主人のところへ戻り何か話しています。

おかみさん
「やっぱりあやしいよ。あんたが言ってたとおり、近づくと知らないふりしてじっとしていたよ。」

店の主人
「そうか、やっぱりそうか。本当に困ったなあ。」

おかみさん
「そうねえ・・・」

店の主人
「そうだ、お前あの客のところへ行って、何を探しているか聞いてみろよ。」

おかみさん
「え〜、私はいやよ。パパが行って、聞いたらどうなの?もしこっちの考えすぎだったらどうするの?」

店の主人
「でもあの態度はあやしいよ。」

おかみさん
「お客さんを見た目や態度だけで判断して、失礼なことをしてしまったら大変なことになってしまうわよ。」

店の主人
「それにしても様子がおかしいと思うけどな。お金持ってきてるのかな?」

おかみさん
「・・・持ってきてるんじゃないの?あんな大きなリュックサックみたいなもの背負っているし、きっとお財布も入ってるでしょうよ。」

店の主人
「しかし参ったなあ。朝から変な客が来たから、仕事になんないなあ。今日は夢見も悪かったからなあ。変な夢だったよ。正夢かもしれんなあ。どっちにしても気になるから、おれ行って聞いてくるよ。」

店の主人は、パパに近づいて行きました。

パパ
「また来るよ。もういいかげん頭に来たよ。でもガマンガマン!」

店の主人
「もしもし、お客さん、何かお探しですか?」

パパ
「・・・」

店の主人
「何か買ってくれるんですか?」

パパ
「・・・」

店の主人
「・・・買い物に来たんじゃないなら、何しに来たんだ!冷やかしに来たのか!」

パパ
「・・・」

v 店の主人
「・・・ひ、冷やかしに来たのか!」

パパ
「・・・」

店の主人
「それとも他の店のまわしものか!」

パパ
「・・・」

店の主人
「じゃあ、おれの店に来て何してるんだい!おれが近づくと手足をひっこめたり、首をすくめたり!じっと黙って知らんふりするし!買わないんだったら、とっとと帰れ!」

パパ
「・・・」

店の主人が怒鳴り始めたので、おかみさんがあわててやってきました。
おかみさん
「ちょっと、あんたお客さんに失礼じゃないの!」

店の主人
「失礼なんかじゃないよ。何聞いてもだんまりだし!気になって仕事になりゃしない。客だと思って声をかけたが、うんともすんとも言わないし。おれのことばかにしてるのか!」

おかみさん
「ちょっと、言い過ぎだよあんた。そんなことないわよ。」

店の主人
「そんなことないことないよ!普通は、店にきて欲しいものがあればすぐ買って帰るだろう!」

おかみさん
「あんた、あんまり怒るとまた血圧があがって倒れるから、あんまりカッカするんじゃないわよ。」

店の主人
「これがカッカしないでいられるか。こんな客始めてだ!おれもう頭に来た!」

店の主人
「おい、あんたたちは何しにこの店にきたんだ!欲しいものがあるんだったら、さっさと買って帰ればいいだろう!こんなちっぽけな店の中に3時間も一体何してるんだ!二手に分かれたり、手足ひっこめたり、首をすくめたり、ずっとだんまりだし!」

パパ・ママ
「・・・」

店の主人
「ほうら、また手足をひっこめたり、首をすくめたりしてるじゃないか!おまえらはカメか!」

おかみさん
「お、お前さん、ちょっと言い過ぎだよ。いいかげんにしておくれ。お客さんに申し訳無いわよ。」

店の主人
「そらトットと帰れ!」

おかみさん
「お客様大変申し訳ございません。ちょっと主人は短気なもので・・・」

パパ
「・・・がまんしてりゃあ何だよ!さっき何て言った!」

店の主人
「カメ野郎、トットと帰れ!って言ったよ」

パパ
「よくそんなこと客に向って言えたもんだ。カメで悪いのか!そうだよ、おれらはカメの夫婦だよ。ゆっくり商品を見て探したっていいじゃないか!手足ひっこめたり、首をすくめたりするのは、亀だからしょうがないじゃないか!亀が買い物しちゃいけないのか!もう、こんな店二度とくるもんか!」

店の主人
「・・・亀?亀なのかあんたたち」

パパ
「ああそうだよ。亀で悪かったな。小さな店だけどいい店だと思って入って見たけど、全くひどい店だ!客のことを客だと思ってないもんな。」

店の主人
「亀だろうが、何だろうが、あんたたちみたいな客は迷惑だ!とっとと帰れ!かあちゃん塩でもまいとけ!」

亀の夫婦は、カッカした店の主人にそっぽをむいて、手足や首を出したりひっこめたりしながら、やっとのことで店の外へ出ました。

亀のママ
「私達が買い物するのはおかしいのかね?」

亀のパパ
「そんなことないさ、亀だって買い物するさ。」

亀のママ
「そうよね、商品を見たり、どれがいいか迷うことだって別に変じゃないわよね。」

亀のパパ
「そうさ、お客にだって商品を選ぶ権利があるよ。それにしても、おとなしくだまってりゃあ、いい気になりやがって!手足ひっこめたり、首をすくめる動きがあやしいだと〜!」

亀のママ
「そんなに私達変なのかしら?」

亀のパパ
「たとえ、しぐさがおかしいからといって、勝手に人をどろぼう扱いにしやがって!何様だと思ってるんだ!お客様に商品を買っていただくという気持ちなんかないんだろうな。それよりも売ってやってるんだっていう気持ちがあるんだろうな。思いあがりもいいところだ!客が来て、買ってくれたお金で生活してんだろうよ!もっとお客様を大切にしろ!」

亀のママ
「それにしても、こんなにひどい店ははじめてだったわね。」

亀のパパ
「ああ、二度とくるかこんな店!」

亀のママ
「亀っていうだけで、この町は住みづらいのね。何だか田舎に帰りたくなってきたわ。」

亀のパパ
「そうだな、もう人のたくさん集まるような町で暮らすのは不愉快なことが多いよ。」

亀の夫婦は、悲しい思いでいっぱいでした。
そして本当にこの町を離れる決心をしました。
ゆっくり手足をひっこめたり出したりしながら、ふるさとへと向いました。

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