雑種のよろ吉 じいじ&ばあばホームへ
ぼくは雑種の小犬。

父ちゃんとは僕が産まれてまだ3ヶ月の頃に離れ離れになってしまったんだ。
父ちゃんと母ちゃんと僕がお散歩をしていると、突然3人くらいの人間がやってきて、僕達をつかまえようとしたんだ。その人達は僕らのような人間に飼われていない犬たちをつかまえにくるという保健所の人達だったんだ。
僕達は必死になって逃げたんだ。
でも、父ちゃんだけつかまってしまったんだ。
僕は、母ちゃんが守ってくれたから何とか逃げることができたんだけど、父ちゃんは僕達のために人間に一生懸命吠えてくれたから逃げ遅れてしまったんだ。
父ちゃん、母ちゃん、小さい僕を守ってくれてありがとう。
でも、父ちゃんが僕達のところへ戻ることはなかった・・・

母ちゃんは、僕と二人だけになってしまい、淋しさを紛らわすために毎日一生懸命に食べ物を探してくれたり、僕と一緒にお散歩をしてくれたんだ。
いろんなところへお散歩へ連れて行ってくれる母ちゃんを見ているといつも感心したよ。
だって、僕の知らないところをたっくさん知っているんだもの。

そんなある日のことだった。

いつものように、母ちゃんと散歩をしていると、突然ものすごい速さで車が向ってきたんだ。
「あっ!危ない!」と母ちゃんは、僕を遠くへ突き飛ばしたんだ。
突き飛ばされてびっくりした僕が母ちゃんの方を振り返ったときには、既に母ちゃんはさっきの車にはねられて死んでしまったんだ。
たくさん人間が集まってきたので母ちゃんを助けてくれるのかと期待してたけど、母ちゃんを見ると「なんだ、野良犬か」といってその場を去って行きました。
僕はどうすることもできずに、「母ちゃん、ゴメンネ!!」と心の中で叫びながら、その場を走り去ったよ。

後から知ったんだけど、母ちゃんは人間のお役所の人がきて、ゴミとして捨てられたって・・・

僕は父ちゃんも母ちゃんもいなくなってしまい、行く当てもなく毎日毎日、家の陰や、草が高く生い茂ったところに住むようになった。
僕は十分な食べ物もなく、身よりもなく、毎日ヨロヨロ歩いていたので、道行く人間達は僕のことを「ヨロ吉」と呼ぶようになった。
ある人は「お手!」といって、手を差し出して待っているが、僕はわけもわからずただ尻尾をふってた。
そんな僕を見て、「ちぇ!お手もできないよ!!」と言って不機嫌そうに去って行くんだ。
僕にはよくわからないよ。
父ちゃんも母ちゃんもそんなこと教えてくれなかったし・・・
僕は尻尾をふるのが精一杯だよ。

でも、そんな人間ばかりじゃないんだ。
「かわいいね」と言って、このヨロ吉の僕を誉めてくれるんだ。
ある時、人間の子供がすごく大きな声で悲しそうに泣いていて、その子供のお母さんがすごく困っていたことがあって、僕が近づいて尻尾を振ってあげると、泣いていた子供がニッコリ笑ってくれたこともあったね。
そして、その親子は楽しそうに手をつないで帰っていったよ。
いいな、母ちゃんがいて、幸せそうだな。

また、ある時、嫌な感じのおばさんが僕を見ると「あっちへ行け!シーッシーッ」って、僕を追い払おうとするんだ。
僕はとっても悲しくなって、こんな時父ちゃんや母ちゃんがいてくれたらなあって涙が出てきたよ。
毎日毎日行く当てがなくて、軒下でボーッと1日を過ごしたり、ただ生きていくだけの日々を繰り返していたよ。

そんなある日、いつものようにお散歩をしていると、おじいちゃんが道路に倒れてたんだ。
びっくりして、僕は通りすがりの人に「クゥーン、クゥーン」と言って、おじいちゃんのところへきてくれるように必死に訴えた。
最初はその人は「何だ、この犬は!」といって変な顔をしていたけど、僕があまりにも必死に訴えているので首をかしげながらもついてきてくれたよ。
おじいちゃんのところへつくと、その人はとってもびっくりして「あれっ!!人が倒れている!!大変だ!!」と慌てていた。そして僕の方を見て「そっか、私をおじいちゃんが倒れていることを教えてくれたんだ。いいこだ。ありがとう」と誉めてくれた。
僕は何だか嬉しかったよ。

よろ吉挿絵 それから、数日がたったとき、「ポチ!ポチ!」と声が聞こえてきた。
僕のことはみんな「ヨロ吉」って呼んでたから僕のことではないなと思っていた。
すると、「ポチ!ここにいたか!!私を助けてくれてありがとう!!」と嬉しそうな顔をしたおじいちゃんが僕の前に立っていた。この間倒れていたおじいちゃんだ。元気になったんだね。良かったよ。
そう思いながら、尻尾をふっていたら、おじいちゃんは「どこに住んでるの?行くところないなら、私のところへこないか?!」と言った。
僕は喜んでおじいちゃんについていった。

おじいちゃんの家に着くと、おじいちゃんの家族に僕を紹介してくれた。
「この犬だよ。この犬、ポチが助けてくれたんだ。」
おじいちゃんの家族はみんな「おじいちゃんを助けてくれたんだね。ありがとう。おじいちゃんの命の恩人だね。」と大変喜んでくれた。
僕はこんなに喜んでもらえてとても嬉しかった。
その日から僕はおじいちゃんの家族の仲間入りをして、みんなにかわいがってもらった。
僕は、身よりのないヨロヨロした「ヨロ吉」じゃない、おじいちゃんの家族「ポチ」になったんだ!!
とってもうれしいよ。

僕はおじいちゃんの家族のために頑張るよ!!
悪い人が入ってこないように見張ってるからね。
おじいちゃんの家族みんながお出かけするときには必ず僕に声をかけていくんだ。
「ポチ!留守番頼むよ!」って。
僕は心の中で「もちろん、まかしといて!!」と得意げな気持ちになった。
毎日が楽しい。
お手も教えてもらったから、今じゃすっかり上手にお手ができるようになったんだ。
おじいちゃんとその家族の役に立つために、喜んでもらえるために、僕「ポチ」は「ワン!ワーン」と尻尾を振ってるよ。
みんなが喜んでくれるから、僕はとってもうれしいよ。父ちゃん、母ちゃん、安心して、僕は今とっても幸せだよ。!

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