探している相手は? |
「ここか、例の場所だな。」 「ええ、ここです。早速いきましょう。」 「トントン!いるのわかっているんだ!戸を開けろ! ドンドン!戸を開けろ!開けないとこっちから戸を開けるぞ!」 シーン・・・ 「開けませんねえ」 「よし、わかった、こうなったら無理やり戸を開けろ!」 「はい」 バタッ 「おい!どこに隠れているんだ!いるのはわかっているんだぞ!」 シーン・・・ 「いませんねえ。」 「あれ?おかしいな・・・外から見てたら気配があったんだが・・・逃げられたか!?おい、もう一回よく見てみろ!」 シーン・・・ 「ええ、やっぱり見当たりませんよ。」 「しょうがない、床をあけてみよう。」 「はい、・・・やっぱりいないみたいですよ。」 「そうか・・・逃げられたか・・・もう一回だけよく探してみよう。」 ・・・シーン 「やっぱりいないみたいです。」 「おかしいなあ。どこに隠れたんだろう。まあ、しかたがない、今日のところはこれで引き上げるとするか。」 「明日にするんですか?でも、ひょっとしたらどっかにこっそり隠れてるんじゃないんですかねえ。」 「ああ、明日でいい。今はいないのかもしれないしな。これ以上やっても時間の無駄になる。」 「そうしますか。」 「でも、何かいるような気はするんだけどなあ。」 「じゃあ、帰るふりをしてそっとのぞいてみますか。」 「そうだな。」 「あっ、いるいる!あの穴から少しだけ頭が見えますよ!あっ!また、見えなくなった!」 「なに?どれ、俺にも見せろ!」 「ほら、あそこです。」 「何にも見えないぞ!どこにもいないぞ!見間違いじゃないのか?」 「いいえ、本当ですよ。ほら、あそこにいる!ああ、また見えなくなった。何だかまぶしそうでしたよ。明るいところは苦手なんですかね。」 「明るいところが苦手?何でだろう?」 「目でも弱いんじゃないんですか?そういう人もたくさんいますからね。」 「じゃあ、昼間には出てこないな。また夜にでも来て見るか。」 そして、夜。 「おい、そっとのぞけよ!くれぐれも相手に気付かれないようにな。」 「はい、あれ?あれ?頭出してキョロキョロしてますよ!」 「そうか、そっと、そっと、近づくぞ。気付かれたら大変だからな。」 「はい。」 「あっ、いたいた!知らんふりしてろ!そして一気につかまえろ!」 「はい、そっと、そっとですね。」 「さあ、いくぞ!それ!」 「あれ?いなくなっちゃいました・・・」 「なに?こら!出て来い!いるのはわかってるんだぞ!」 「しかし、なんてすばやい動きなんでしょうか。さっと隠れて」 「あっ、ほら、頭を出したぞ!」 「あ〜、また逃げられた〜!本当にすばしっこいですね。」 「隠れて、逃げて、俺たちに借金でもあるのか?俺は貸したつもりはないけどな。」 「ははは、私も貸した覚えはないですね。まさか、モグラにはお金は貸しませんからねえ。」 「まあ、逃げるのも無理はないか。人間につかまったら大変だもんな。」 「そうそう、私がモグラだったら、やっぱり身を隠して安全に暮らしますね。」 「はあ〜・・・もうあきらめるか。」 「そうですね、もうあきらめましょう。」 「しかし、モグラも大したもんだなあ。」 「ええ、よく頑張りましたよ。私達の負けですね。」 「ああ、俺たちの負けだ。あきらめて、帰ろう・・・」 こうして、モグラ捕獲作戦は失敗に終ったのでした。 |
このページの先頭へ | 昔話風・現代風メニューへ | 童話メニューへ | ホームへ |