わめきのゴンタ じいじ&ばあばホームへ
通称「わめきのゴンタ」とは私の主人のことだ。

何故かって、それは朝起きて夜寝るまでよくわめくからだ。

朝起こすと、「まだ眠てえ。もう少し寝かせてくれ。」というから、そのままにしてあげたのに、しばらくして突然飛び起きて「もうこんな時間になりやがって!なんで早く起してくれないんだ!」とわめく。

それから、バタバタと朝食になるが、何だかこだわりがあるらしい。
まず、朝はごはんよりもパンだという。
それもパンのつけあわせはこれでなくちゃ、必ずコーヒーにしてくれとか。

そして朝食が済むと、会社に行く準備をし始めるが、すんなりいったことがない。
ワイシャツの糊のききが悪いとか、アイロンがよくかかってないとか、ブツブツとわめきたてる。

さあ、これでわめきのゴンタも会社へ行けば静かになると玄関まで見送るが・・・
あの靴はどこだ、靴のみがきが足りないとか、最後までわめいている。

いつもこんな調子だから、当然電車の時間もギリギリ。
駅から少し遠い家なので、駅まで歩いて行くにも結構時間がかかる。
だからよくバスを使うらしい。
バス停で待っていて、なかなかバスがこないとなればもう大変。
なんでバスがこないんだ!全く何やってんだ!運転手寝坊でもしたのか!などと自分が寝坊したことを棚に上げてわめいている。

やっとバスが来て乗ったら乗ったで、通勤時の道路が車で混雑していてなかなか前へ進まないとなると、またわめく。
これじゃあ歩いた方が早いぞ!と。
だったら降りて歩けばいいのにと思うが、そのままバスに乗っている。

こうしてやっとの思いで駅に着き、駆け足でホームに向う。
たくさんの人達でごった返すホーム。
それを見て、随分人が多いなと一言。
電車が来て、押しつぶされるように車内へ乗りこむと、何でこんなに混んでるんだ!座れやしない!これで同じ運賃とはおかしいぞ!とわめく。
仕方なく立っているが、人に聞こえるように「あ〜、足が痛くて立ってられない。」といかにも席を譲ってくれといわんばかりだ。
中にはそんな声に耐えきれずに席をたつものもいて、これはラッキーとゴンタは座ろうとする。
しかし、隣に立っていた女性が先に座ってしまった。
ゴンタの腹の虫がおさまらない。
何だ!俺がすわろうと思ったのに、先に座りやがって!と嫌味たらしくつぶやく。

そしてやっと目的の駅につき、ゴンタは電車を急いで降りる。
会社まで歩いていると、これまたよく赤信号にぶつかるらしい。
まあ、よく信号が変るもんだ、早く青になれ!とわめく。
会社までわずか500m歩くのに、何回も赤信号にぶつかる。
これじゃあ、いつ会社に着くかわからないぞ。こまったもんだ。とわめく。

ようやく会社についたゴンタ。
さすがに会社ではわめいたりはしないだろう。
と思ったのは甘かった。

エレベーターがなかなか下りてこない。
またわめく。
どうなってるんだ!エレベーターがこないぞ!
やっときたエレベーターは、定員いっぱいでこれ以上乗ることはできない。
ブツブツ言いながらも、隣のエレベーターが来たので急いでそちらへ移動する。
しかしこっちのエレベーターも同じく乗れない。
そんなことを何度か繰り返してやっとのことでゴンタの会社へたどりつく。

一応遅刻寸前ギリギリセーフの出社だ。
ひとまずホッとするかと思えば、なんだ時間ギリギリじゃないか!これじゃあトイレに行く時間もないじゃないか!まいったなあ、とわめく。

昼になって食堂にいくと、どこも行列になっている。
なかなか昼飯にありつけないゴンタ。
何でこんなに並ばなきゃ飯食えないのか!早くしろ!とわめく。
やっと順番が来たと思うと、もう昼休みが終る時間になっている。
昼飯にありつけないまま、一体どうなってるんだ!社員に昼飯も食わせる時間がないのか!とわめきながら、会社へと戻る。

腹を空かせているので、ますますわめきはパワーアップする。
仕事中も、誰だ!こんな仕事をしたのは!こんなんじゃわからないぞ!とわめきちらす。
少しでも終業時間を超えて仕事をしようものなら、大変。
これじゃあ残業つけられないぞ!サービス残業じゃないか!会社も少しは考えろ!とわめきだす。

むしゃくしゃした気持ちを押さえようと、ちょっと一杯やってくかと財布の中を見る。
中身はさびしいもの。
何で俺の財布はいつもさびしいんだ!と一人でブツブツ。
自動販売機でワンカップを買って、道端でグイッと飲む。
ちょっと飲んだせいか、またわめきだす。
お〜い、酒の無い国に行きたいよ〜、といかにも酒をたらふく飲んでいるかのようにふるまう。
ちょっとわびしいゴンタだ。

財布もさびしいゴンタは、一人さみしく帰りの電車を待つ。
あいかわらず、早く電車こい!とわめく。
電車が来たと思ったら、やけにすいている。
おっ、これは俺の特別電車か!俺も偉くなったもんだ!と回送電車に向ってブツブツ。

電車に乗って、駅に着いて、駅前に並べられている自転車にぶつかる。
何ぶつかってくるんだ!と自転車に向ってわめく。
疲れたし、バスで帰ろうと思ってバス停に行くが、もうバスがない。
何でバスがないんだ!なんでこんなに早い時間に切り上げるんだ!とわめく。

ちくしょう!タクシーにのってやる!と道でタクシーを待つが、なかなかタクシーがこない。
やっと来たと思って手をあげると、中に人が乗っている。
それでも、タクシーにわめく。
なんだと、俺を乗車拒否するのか!手をあげてるのに止まらないとは一体どこの会社だ!とわめく。

やっと空車のタクシーが来て、乗る。
運転手にどちらまでと聞かれても、まっすぐとしか言わない。
運転手も困ってお客様まっすぐと言っても・・・と言うが、そんなことはおかまいなし。
いいんだ!まっすぐだ!
しかたなく運転手もまっすぐ行くと、突然なんで今の信号で曲がらないんだ!とわめく。
お客様がまっすぐと言われたので・・・と言っても、聞いちゃいない。
俺に聞けばいいだろう!
運転手が次の道で曲がるかどうか聞くと、うるさい!さっきからまっすぐだって言ってるだろう!とわめく。
とんでもない客を乗せたと運転手を心の中で思うが、がまんしながら何とか家までたどりついた。
運転手はようやくこの客から解放されると思って料金を言う。
すかさずゴンタはタクシー代高いぞ!おまけしろ!という。
本当に嫌な客だと運転手は思う。

ゴンタが玄関のチャイムを押してもなかなか誰も出てこない。
やっと出てきたと思ったら、何で早く出てこないんだ!俺が帰ってくるのわかってるだろう!とお帰り早々わめいている。
お風呂に入りますか?と尋ねれば、めしが先だ!という。
食事中もめしが少し固いぞ!もっといいおかずないのか!とわめく。
お風呂に入れば、ちょっとぬるいぞ!とわめいている。

本当に朝から晩までよくわめいている。
こんなお父さんを見て子供達が育つかと思うと心配。
子供が大きくなったら絶対お父さんのような人にはなってほしくないから。
わめきのゴンタはいつか自分に気付いてくれるだろうか。

でもわめいているのは、本当はさびしいからかもしれないね。

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