チロとなかよし じいじ&ばあばホームへ
野原に一匹の捨て犬がおりました。
毎日行くあてもなく野原を歩いては休み、また歩いては休み、遠くを眺めてみたり、道行く人を眺めてみたり、何を思うともなく毎日ボーッとして過ごしておりました。

一夫君という小学生の男の子がこの野原の近くに住んでおりました。
一夫君は学校に行く途中で、この捨て犬を見かけました。
捨て犬は一夫君の姿を見ると、しっぽをふりながらかけ寄ってきてました。
一夫君と捨て犬はすぐになかよしになりました。
そしてその捨て犬に「チロ」という名前をつけました。

一夫君は学校帰りもその野原に向い、チロに会いにいきました。
チロも一夫君の帰りをジッと待っています。
いつも野原をかけっこしたり、小川で水遊びをしたり、アッという間に時間がたってしまいます。

一夫君はチロがお腹をすかせてることと思い、学校に行く時ママにナイショで食べ物を少し持っていってあげます。
最近一夫君は早起きになり、学校にいく時間も30分は早くなりました。
それもチロに会うためです。
一夫君は毎日チロに会うのが楽しくて楽しくてしかたありません。
もちろんチロも一夫君に会うのが楽しみで、一夫君が来るとすぐにシッポをふりながらクンクンと顔をよせてきます。

一夫君は学校帰りも給食を少し残してチロに持っていってあげます。

チロはまだ3ヶ月くらいの子犬です。
一夫君にいつもくっついていこうとしますが、一夫君はチロを家に連れて帰ることはできませんでした。
一夫君のパパは犬があまり好きではなかったからです。
一夫君は「ごめんね、ついてきたらだめなんだ。でも、毎日来るからね。」とチロに言い聞かせました。
チロも一夫君の気持ちをわかってか、悲しそうな目をして一夫君の帰る後姿をただただジッと見つめていました。

それから数日後、いつものように学校へ行く途中に一夫君が野原に行きましたが、チロの姿がありません。
どうしたのかなと心配になった一夫君は、学校から帰る途中も急いで野原に寄りましたが、やはりチロの姿がありません。
一夫君はいろんなところを探しまわりましたが、どこにもチロはいません。
気が付くとあたりはすっかり暗くなっていました。

落ちこんだ気持ちで家へ帰った一夫君。
家の前では心配そうにママが一夫君の帰りを待っていました。
「ただいま」
「一夫!こんな遅くまでどこに行ってたの!」とママは一夫君をしかりました。
一夫君はママにしかられてショックでした。
そのうえ、パパが帰ってくるとママは一夫君が夜遅くに帰ってきたことを知らせて、パパからもしかられてしまいました。
一夫君は犬嫌いなパパには、本当の理由を言うことができずにタダタダ黙っていました。

一夫君は夜寝ようとしてもチロが心配でなかなか眠ることができませんでした。

朝が来てまた学校に行く途中、野原にチロの姿を探しました。
するとキズだらけのチロの姿がありました。
「チロ!」と一夫君は声をかけました。
しかし、チロはいつものようにそばにかけよってはきませんでした。
「チロ、どうしたの?朝ごはんもってきたよ。チロ!」
一夫君はぐったりしたチロに何度も話しかけました。
するとチロはゆっくりとひざをつき、ゆっくりとおきあがろうとしました。
そして黙って一夫君の顔を見て、数分後安心したのかやっと立ち上がり一夫君のそばまで近づいてきました。いつものようにシッポをふりながら、顔をすりよせて、一夫君の持ってきてくれたごはんをゆっくりと食べはじめました。

一夫君は学校帰りも急いで野原によりました。
チロはいつものように一夫君を待っていました。
「チロいったいどうしたんだい?」と一夫君が聞いても、チロは言葉を話すわけではありません。
一夫君はチロの寂しそうな目を見るたびに、本当は自分の家に連れて帰って飼いたいと思うのでした。
犬嫌いのパパにどう言ったら許してもらえるのか考えると、なかなか切出すことができません。

そして数日後夜遅くにパパが少しケガをして帰ってきました。
何だかお酒を飲んで酔っ払った人にからまれたとかで、大変だったそうです。
その時、野良犬がやってきて酔っ払いを吠えまくってパパを助けてくれたそうです。
パパはその野良犬にお礼を言いたいので、一夫君と一緒にその犬に会いに行こうと言い出しました。
パパは土曜日がお休みだったので、一夫君が学校行く前にパパに連れられてあのいつもの野原へやってきました。
するとチロがジッとシッポをふって待っておりました。

一夫君が「チロ!」と呼ぶと同時に、パパが「一夫、この犬だよ!この犬が助けてくれたんだよ!」と教えてくれました。
パパは本当は犬が苦手です。
でも、うれしそうにチロの方を見ていました。
チロが一夫君のそばに寄ってくると、一夫君はいつものように朝ご飯をあげました。
それを見ていたパパは「なんだ、一夫この犬知ってたのか?いつも朝ご飯をあげてたのか。夜はどうしてるんだ。」と聞きました。
「学校の給食を少し残して帰りにあげてるんだ。」と一夫君は言いました。
「そうだったのか・・・ところでチロとか呼んでたけど、誰がつけたんだ?」
「僕がつけたんだよ。だってチロとは大のなかよしだもの。」と一夫君は目をキラキラさせて言いました。
「そうか。なんで早くパパに教えてくれなかったの?」
「・・・だってパパ犬嫌いだから・・・」
一夫君はうつむいて言いました。
「・・・さあ、チロを家に連れて帰らなくちゃね。」
パパは一夫君にVサインを出しながら言いました。
「本当!?パパいいの?!じゃあさあ、ぼく学校に行くから、パパ連れて帰ってくれる?」
一夫君はパパの意外な言葉にうれしくて飛びあがりそうでした。
「ああ、もちろんだよ。なあ、チロ、パパと一緒に帰ろうね。」
パパはなれないながらも、チロの頭をなでました。

するとチロは、クンクンと声を出してうれしそうにシッポをふりました。
そして、一夫君は学校へ、チロは一夫君の方をふりかえりながらパパの後ろにくっついていきました。

一夫君は学校へ行っても、そわそわしていました。
だって今日から家へ帰ったらチロがいるのですから。
一夫君は学校が終ると一目散に家へと帰りました。

家へ帰るとチロがシッポをふって待っていました。
そしてパパとママは一夫君が先日夜遅く帰ってきた理由をわかってくれました。
あのとき一夫君は本当の理由も言えずに、ただしかられるだけでショックでしたが、今はみんなわかってくれて心がすっきりしました。

一夫君は学校に行く前には必ずチロと散歩しています。
犬嫌いだったパパもお休みの日はチロと散歩にでかけたりもします。
日中いつも一緒のママとチロはすっかりなかよくなりました。
こうしてチロが来てからはみんな一層明るく、なかよくなりました。
チロも家族の一員として、おうちの安全を守っています。

チロと一夫君、そしてパパとママはみんななかよしです!

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