あやつりマウス じいじ&ばあばホームへ
おとうちゃんはいつも仕事は終ってもすぐ帰ってこないし、日曜日はまず家にいることないし!
どうしたらいいのかしらね。

おかあちゃんはあれこれ方法を考えていいことを思い付きました。

今おかあちゃんは毎日パソコンでいろいろと楽しんでいるので、このマウスを使っておとうちゃんをあやつることができないものかと考えました。

そうだ、この手だわ!
日夜考え、たどりついたことは、おとうちゃんの1日のスケジュールをつくりあげ、これをおとうちゃんの寝ている間にこっそりとからだにプログラムしておき、あとはマウスであやつるという方法でした。

おかあちゃんは、早速この夜、おとうちゃんに気付かれないようにプログラムをセッテイングしました。

次の日、おとうちゃんが出かけると同時におかあちゃんはマウスを操作しはじめました。

この日もおとうちゃんは仕事が終ってからお酒を飲みに居酒屋へ寄ろうと右の道へ曲がろうとしました。
すかさずおかあちゃんはマウスを操作しました。
するとおとうちゃんは居酒屋へは寄らずに我が家へと向い始めました。

ある日は、疲れたおとうちゃんがタクシーに乗って帰ろうとしたので、おかあちゃんは電車に乗るようにマウスを操作しました。

またある日は、お昼休みにカツ定食を食べようとしたおとうちゃんを操作し、安い食堂へと進むようにしました。
おかあちゃんはちょっとかわいそうだなあと思っておりましたが、そうは見えません。
だって、マウスを操作するのが忙しいとかが理由でご飯の仕度をせずに、その日の昼食は自分ひとり出前の寿司をとっていたのですから。

おとうちゃんが帰ってくるまでは安心できないと、おかあちゃんはビールを一本飲み干しながらマウスを操作しています。
もちろん、このことはおとうちゃんにはナイショです。

おとうちゃんが帰ってくると、おかあちゃんは上機嫌で出迎えます。
「お帰りなさい。おとうちゃんお仕事ごくろうさん。さあ、冷たい麦茶がありますよ。」

しかしおとうちゃんも何だかこのところ様子がおかしいと感じていました。
「なあ、おれこのごろすこしからだがおかしいんじゃないかと思って。よくわからないんだけど、一杯飲んでこうと思って居酒屋に向うんだが、身体が急にいうことをきかなくなるんだよ。病気にでもなったのかなあ?」

おかあちゃんは自分が操作してるなどとは言えません。
「そう?そうは見えないけどねえ。顔色もいいし、気のせいよ!おとうちゃんは家族のことを思ってまっすぐ家に帰ってきてくれるんじゃないの?」

「そうかもしれないなあ。まあ、気分転換に今度の日曜日にゴルフにでも行ってくるからね。」

「ええ、わかりました。楽しみですねえ。」

日曜日の前日、おかあちゃんはおとうちゃんが寝ている間にゴルフには行かないで家族と楽しむようにセッティングしました。

そして日曜日、おとうちゃんは朝起きて「さあ、今日はゴルフへ行くぞ!」と準備をして玄関まで行きました。
するとおかあちゃんは出かけようとしているおとうちゃんのうしろでこっそりマウスを操作しました。

おとうちゃんは何か夢でも見ているかのように、ゴルフに行くのを急にやめて、言いました。
「自分でも何があったのかよくわからないが、今日はみんなで一緒にでかけようか?」
おとうちゃんもよく考えてみたら、今まで家族で出かけることなどほとんどないことに気が付きました。
そして、いつしか毎日仕事が終ったらまっすぐ帰ってきて家族と一緒にいるのが一番だと思うようになっていました。
もちろんおとうちゃんはおかあちゃんがマウスであやつっているなんて知りません。

おかあちゃんはそんなおとうちゃんを見ているとなんだか少しかわいそうになってきました。
しかし、家族みんなでご飯を食べて、1日のことを話したり、楽しく暮らして行くことはすばらしいとつくづく実感していたのも事実でした。

おかあちゃんはおとうちゃんだけでなく子供達もマウスであやつるようになっていました。
マウスであやつられた子供たちは、街でフラフラしたり、電車の中でマナー違反をおかすようなことはなくなりました。
そして周りの人達から、子育てがしっかりしているといわれるまでになりました。

おかあちゃんは嬉しい反面、自分がマウスであやつってできていることなので、果してこれでいいのかなあと思いはじめました。

それから半年位たってから、おかあちゃんはマウスで家族をあやつることをやめました。
マウスであやつるのをやめてしまったらどうなってしまうのかちょっと不安でしたが、何も変わったことはおきませんでした。

最初はマウスで家族の身体にいろんなことを操作しましたが、もうマウスがなくてもすっかり身についていたのです。
そしてこの家族はみんな仲良く、周りに迷惑をかけることもなく幸せな日々を過ごしました。

今ではおとうちゃんも家族でテーブルを囲み、ご飯を食べることが楽しみだと話しています。
おかあちゃんはそんなおとうちゃんを見て、心の中でちょっぴり謝りました。
でもこれもマウスのおかげだと思っていました。
最初は強引だったかもしれないけれど、このマウスのおかげで今は幸せです。
マウスに感謝しています。
そしておかあちゃんはマウスを見つめて一人で笑っています。
そんなおかあちゃんを見てみんな不思議そうに見ていますが、おかあちゃんがあまりにも楽しそうに笑っているので、家族みんなも笑い出しました。

笑顔いっぱいの家庭をありがとう!マウスさん!

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