エーリと森の動物は友達 |
丘の上で草ブエを吹いている音が聞こえてきます。 森の動物たちが草ブエの音にひかれてあたりを見まわしています。 どこからそのフエの音が聞こえてくるのか耳を傾けて、首をかしげて、少しずつ少しずつその方向へ近づいていきました。 どんどんフエの音に近づいて行くと、7、8才くらいの男の子がすわって草ブエを吹いていました。 男の子が草ブエを吹いている音は、森一帯に響き渡り、動物たちがその音にひかれて集まり、やがて男の子の周りには森の動物たちでいっぱいになりました。 この小さな男の子はエーリという、やさしい気持ちを持った子供でした。 フエの音にひかれてやってきた動物たちも最初はなかなかエーリに近づこうとはせずに、遠巻きに見ていました。 しかし、日がたつにつれて、動物たちは少しずつエーリのそばに近づいていきました。 そして、いつの日からか、からだを寄せ合って、フエの音を聞きながら、エーリと動物たちは仲良く森の中で過ごし始めました。 エーリがきてからというもの、森の動物たち同志の争いやけんかが無くなり、みんな心をひとつにして、楽しく暮らすようになりました。 エーリは毎日森にあらわれて、暗くなるころに帰っていきます。 動物たちは毎日エーリに会えるのに、そんな毎日の別れがとてもさみしく思っていました。 それと同時に、明日またエーリに会えるのを楽しみにしていました。 空が美しく晴れあがり、空気の澄んだ丘の上。 エーリが草ブエを吹き始めると、森中にその音色が響き渡ります。 その訪れを待っていたかのようにいっせいに動物たちがエーリめがけてかけていきます。 動物たちがやってくると、エーリは草ブエを吹くのをやめ、みんなとお話します。 「みんな、今日も来てくれたんだね、みんなに会えてうれしいなあ。みんなからだはだいじょうぶ?もし具合が悪くなったらぼくにいってね。」 こんな風にエーリは集まってきた動物たち一匹一匹に話しかけるのでした。 「丘の上は、平和な気持ちになれる場所だねえ。それにこんなに素敵な仲間がいて、幸せだねえ。毎日毎日、楽しいなあ。」 エーリは草ブエをきっかけに、動物たちと心を通わすことができて本当にうれしく思っていました。 そんなエーリの心が通じているのか、動物たちは、エーリのそばを離れずに一緒に時を過ごします。 実はエーリには友達がおりませんでした。 しかし丘の上で素直な気持ちになって動物と接していたことで、動物たちにもその気持ちが通じ、仲の良い友達となれたのでした。 今までエーリは傷つくのを恐れ、心を閉ざしておりました。 動物たちと仲良くなったことで、自分から心を開くことにより相手も心を開いてくれるのだということがわかりました。 毎日毎日草ブエの音色が森中に響き渡り、そして人里にもその優しい音色が届いておりました。 エーリの草ブエは、丘の上や森の中だけではなく、人々の心をもやさしく、あたたかいものにしてくれました。 いつしか、エーリは動物たちだけではなく、今まで閉ざしていた心を開き、他のこどもたちとも楽しくふれあうようになりました。 出会いやふれあいというものが、こんなにも心を美しく、やさしくするもので、それさえあれば幸せになれると心から思うエーリの顔はキラキラと輝いています。 |
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