赤いフキコの苦しみ |
あ〜、冷たい! 何か首筋が冷たいな、身震いするほど冷たい。 あれ?また頭の上に雪のトンネルだ! ポタポタと雪が溶けはじめて、春がもう目の前だ。 みんなももう目覚めているんだね。 とっても気持ちがいいね。 空気も水もおいしいね。 私は、ふきのとうのふきこ。 ふきのお母さんは、ふきこにこういってた。 「地上に出たら苦しい毎日が続くけど、どんな苦しみも耐えぬいて、生きていかなくてはいけないのよ。でも、ふきこなら大丈夫。だってふきこは母さんの子だもの。ふきこ、母さんはこれ以上あえて何もいわないよ。これから自分でいろいろおこることに気が付いていくと思うから。」 ふきこにはまだ何のことだかさっぱりわからなかった。 あっ、人が来た! 「何だこのふきのとうは?!開きっぱなしでバサバサだぞ。これはだめだな。」 そういったあと、ふきこの周りのふきのとうを取っていく。 ああ!!私の仲間が連れ去られて行くわ! やがて1ヶ月ほどたち、またふきこの近くに人間がやってきた。 「おお!ふきだ!ふきだ!」と取り始めた。 ふきこのそばまで人間はやってきた。 「ああ、このふきは赤いからおいしくないな。ダメだなこのふきは。やっぱりふきは白くなくてはね。」 ふきこは自分の身体をしのらせてよくみてみた。 するとふきこの身体は人間のいうように赤くなっていた。 ふきこはなんで赤いとダメなのかな?と思ったが、人間に取られないですんで今日も無事過ごせることができてホッとしていた。 それから、さらに数週間たった。 ああ、今日もすがすがしくて気持ちがいいな〜。 あれ、今度はふきこの近くに大勢の子供達がやってきた。 どうしたんだろう?と思っていたら、今日はどうやら遠足らしい。 ふきこは小さな子供達をほほえましくみていた。 するとひとりの子供がやってきて「なんだ、この赤フキ!」といいながら足でフキコを蹴り始めた。 しばらく痛さをこらえていたが、フキコの足の方が少しグシャグシャ、バサッとさけてしまった。 ・・・痛みが走る・・・苦しいよ・・・ すると空模様が急に悪くなってきて、雨が振り出してきた。 なんとその時、子供達はフキコの大切な帽子をとって、傘がわりにしてしまった。 フキコの他の仲間も子供達のかさがわりにされてしまったようすだ。 みんな身体の一部の帽子をはぎとられて、大変痛そうにしてるのがわかった。 もちろん、ふきこも痛かったし、苦しかった・・・でも耐えていた。 しかし、その時から雨はもちろんのこと、風が強い日もつらかった。そして何よりも青空が広がり、お日様が元気のよい日が一番つらいことがわかった。 大切な帽子を取られてしまったので、風の日は首から風がしみ込み、雨の日は雨水が入り、身体の中がグニョグニョしてきて気分が悪い。 またある日は大切な帽子がないので、フキコの身体の中に虫が入り込み、フキコの身体を食べていく。 そして晴れた日は、フキコの全身が暑くて立っているのがつらかった。 時々、近くにいる仲間の帽子にいれてもらうこともある。 足を蹴られ、帽子を取られ、赤いふきこにとって、生きることってこんなに苦しいのかと思った。 お母さんの言っていたとおりだ。 毎日苦しい日々が続くって。 でももうこんな苦しみは嫌だよ。 もういちど生まれかわるときには、白いふきに生まれたい。 |
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