あま〜いお話 じいじ&ばあばホームへ
 今日は朝から天気もいいし、とっても気持ちがいいや。
おっ、そろそろ孫のさっちゃんも仕事から帰ってくる頃だな。

 「ただいま〜、おじいちゃん。」
 「おお、さっちゃん、お帰り。毎日お仕事ごくろうさんだね。仕事の方はどうかね?」
 「うん、そうねえ、最近は食べ物をあまり大事にしてないようだわ。」

 あっ、そうそうみなさんには言い忘れておりましたが、わたくしはアリのじいさんで源太と申します。
さっちゃんはわたしの孫でね、本当に働き者で安心しております。

 「おじいちゃん、ひとりで何しゃべってるの〜?」
 「あっ、いやいや、ちょっとねえ。」

 「ところで、おじいちゃんは小さい頃から甘いものは好きだったの?」
 「ああ、おじいちゃんは子供の頃から甘いものが好きだったなあ。でもなあ、今みたくいろんな物がなかったから食べるっていうこと自体困っていたものだねえ。」
 「ふーん。」

 「おじいちゃんが身体を壊して寝込んでしまったときのことだけど、おじいちゃんのお母さんが、甘い牛乳を飲ましてくれたんだよ。おいしかったなあ。」
 「おじいちゃんの子供の頃にも牛乳ってあったんだ。」
 「それがね、今思うとあれは牛乳じゃなかったんだ。お米のとぎ汁をわかしてそれにお砂糖を加えて飲ましてくれてたんだよ。その時は本当に牛乳だと思ってたんだよ。物のない時代だったからお母さんがお砂糖を入れて飲みやすくしてくれたんだね。」
 「そうだったんだ。」

 「でもお砂糖を買うといっても、スーパーへ行ってお金を出せば買えるってものではなかったんだ。配給という形でチケットみたいな通帳がないと買えないんだ。」
 「・・・おじいちゃんの子供の頃って大変だったんだね。」
 「そうだねえ、通帳があってもお金が無くては買うことができなかったから、本当に大変な時代だったんだ。そんな時代に甘い砂糖の入ったお米のとぎ汁を飲ませてもらったことは今でも忘れられないなあ。」

 「ほかにも甘いものってあったの?」
 「そうだねえ、お店屋さんでアメ玉を売ってたねえ。今とは違ってビニールで一つ一つ包装してるわけではないし、二〇個入りとかで売っていたわけではなかったけどねえ。」
 「え〜、じゃあどんな風に売ってたの?」
 「ああ、お店屋さんの店先のケースの中にアメ玉がバラで入っていて少しずつ買えるようになってたんだ。それがまたアメが溶けかけていたりしてね、今では考えられないねえ。それでもその甘いアメを求めて我先にと買ったものだよ。」
 「そんなにすごかったの?」
 「すごかったなあ。今でいうバーゲンの時の人だかりみたいな感じかな?いやそれ以上だったかもしれないなあ。大勢で群がって、にぎわっていたね。子供たちにしてみれば甘いアメを食べるのがちょっとした夢だったからね。」
 「今はアメで行列ができるなんてあまり聞いたことないものね。評判のおまんじゅうを求めて並ぶなんてことならよくあるけどね。」
 「ほほう、おまんじゅう。おじいちゃんのお母さんはおまんじゅうが大好きでね。たまにおまんじゅうが手に入ると、おじいちゃんにも少しわけてくれたものだ。本当においしかった。めったにおまんじゅうなんて食べられなかったから余計に味わって食べてたなあ。」

 「おじいちゃんの子供の頃ってあんまり物がなかったかもしれないけど、すごく食べ物がありがたかったんだろうねえ。今でも甘いものってなんとなくぜいたくな気分になるものね。」
 「さっちゃんも甘いもの好きかい?」
 「うん、大好きだよ。おじいちゃんの子供の頃はビニールとかで包装されてなかったから、匂いとか形とかよくわかっただろうねえ。今じゃビニールとかで包装されてるから匂いも形もわからないことが多いんだよね。それがちょっと残念かな。」

 「そうかそうか、今は物はたくさんあるけど、なかなかその実際のものを見たりすることができないのか。時代が変わったんだなあ。」
 「時代が変わったといえば、最近いろんなお家をのぞいてみるとずいぶん食べ物を粗末に扱っているのがわかるわ。もったいないよね。おじいちゃんの子供の頃だったら、そんな光景みなかっただろうね。」

 「そうだねえ、なにしろ物がなかったから大切に食べ物を扱っていたね。今はいろんな料理にお砂糖を使っていい味をだしてるだろう。昔はお砂糖ってぜいたく品だったから、さっき話してたアメとかおまんじゅうなんていうのは本当にめったなことでは手に入らなくて、あまいものといえばかぼちゃとかさつまいもとか素材の甘さを持った野菜とかがおやつだったんだよ。」
 「そうかもしれないね、かぼちゃとかさつまいもって甘くておいしいものね。言われて見れば料理するときにお砂糖をちょっと入れたりするわよね。だからってお料理が甘くお菓子みたくなるわけじゃないしね。隠し味ってところかしらね。」

 「さすがさっちゃんだなあ。よく各家庭の様子を見ているね。おじいちゃんもあちこちいってみたいけど、もう足が悪くなってしまって歩くのが大変になってしまってねえ・・・また若い頃のようにいろいろと出かけてみたいなあ・・・」
 「おじいちゃん・・・お仕事ならさっちゃんにまかせといて!それに外の様子はさっちゃんがお話してあげるからね。」
 「さっちゃん、ありがとう。そうだね、さっちゃんにまかせるね。」

 「うん、もちろんだよ。そうだ、今日はケーキ屋さんの前にいっぱい人が並んでいたよ。」
 「ほう、そんなに人が賑わっていたのかい?おじいちゃんもこの目で賑わいを見てみたいなあ。」
 「そうだねえ、なんでもこのケーキ屋さんのケーキはさっぱりした味でくどくない甘さでとてもおいしいって評判なんだって。さっちゃんも食べて見たかったんだけど、なかなか入れなくて・・・でも、なんとか、一口だけ食べることができたの。それが、とってもさっぱりしていておいしかったの。あの味ならいくら食べてもあきないと思うわ。」
 「そんなにおいしかったのなら、おじいちゃんも一度たべてみたいなあ。おじいちゃんの子供の頃にはケーキなんて聞いたこともなかったからねえ。」
 「そうだったの、おじいちゃん。だったら少しもってきてあげればよかったなあ。ごめんね、おじいちゃん。」
 「いや、いいんだよ。またいつか食べれるさ。」

 「そうだね、今はどこへ行っても甘くておいしいものがたくさんあるからね。パンとかプリン、ゼリーとかいろいろね!」
 「そりゃあ聞いてるだけでも楽しそうだなあ。」
 「甘いものって不思議よね、何だか楽しい気分になるものね。」
 「そうだねえ、楽しい、おいしいだけではなくて、身体にも大切な栄養なんだよね。特に子供の成長期にはなくてはならないものなんだよ。もちろん取り過ぎはかえってよくないけどね。」
 「そういえば、今日のぞいたお家でそんなようなこと言ってたわ。お母さんが小さい子供にね。」
 「さすが、さっちゃん、しっかりものだな。さあ、仕事から帰ってきたばかりで疲れただろう。少し甘いものでも食べてゆっくりした方がいいよ。」

 「うん、そうそう、これおじいちゃんにおみやげ。」
 「おお、これはアメじゃないか!おいしそうだねえ。さっちゃん、ありがとうね。」
 「今日は偶然アメの話がでたけど、小さい頃のアメの味と同じくらいおいしいといいね。」
 「おお、おいしい、おいしい。さっちゃんがくれたアメだから余計おいしいよ。ありがとう、ありがとう。」
 「そう、よかった、おじいちゃん。」

 「さっちゃんは、よく働くし、こうやっておじいちゃんにも優しくしてくれるし、本当にいい子に育ったね。さっちゃんみたいな孫がいておじいちゃんは幸せだよ。まあ、あまり無理せずに頑張るんだよ。」
 「うん、今日はおじいちゃんの昔のお話聞けてとても楽しかったよ。また聞かせてね。」

 みなさん、こんな素敵な孫がいてうらやましいでしょう。
さっちゃんのおかげでわたしも毎日甘いものを食べることができて、元気でいられるんですよ。

 「おじいちゃん?何?また一人でしゃべってるよ。」
 「あっ、いや何でもないよ。そうか、そうか、また甘くて楽しいお砂糖のお話しようね。」

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