閉じこもった豆 じいじ&ばあばホームへ
ここは北国。
冬はとても寒さが厳しいところで、農作物といえば、主に豆類です。
長い長い冬も終り、やがて春がやってきました。

作造じいさんは、畑に黒い灰を畑一帯にまき、どこよりも早く雪をとかして、豆の種をまく準備に入りました。
土地を耕し、「さあ、今年もどこにも負けない良い豆をつくるぞ!」と毎日毎日朝も暗いうちから夜は日が暮れて目の前が見えなくなるまで仕事に励みました。
というのも作造じいさんにとっては、豆は毎日毎日手塩にかけて育てる我が子のようなものだったのです。

さあ、いよいよ種まきの時がやってきました。
「おらの子供達よ、がんばっておくれ!今年も皆様に喜ばれる豆になっておくれ!」
せっせっと一粒ずつ豆の種をまきました。

豆はやがて芽をだしました。
作造じいさんは、畑の雑草を取りながら、豆たちに願いをこめて話しかけていました。
「子供達よ、元気に育っておくれや。これから雨の日、風の日、いろいろと天候が悪いこともあるけど負けずに育っておくれや。」

豆たちも作造じいさんの優しい言葉に「よ〜し、作造じいさんのために、皆様のために、良い豆になろうね。」と誓ったのでした。
そして、豆たちは順調に育っていきました。
秋も近くなった頃、豆たちは口々に話していました。
「これなら、作造じいさんにも喜ばれるよね。台風もこなかったし、お天気も悪くなかったし、立派に育ってるよね。」

やがて、秋がやってきました。
作造じいさんは「おお、豆たちよ、よ〜くがんばったなあ。今年もみんなに喜ばれることだろう。」と本当にうれしそうでした。

刈り入れの時がきて、作造じいさんは「豆たちよ、ありがとうね、ありがとうね。」と声をかけながら、感想したさやを丁寧に取り、中からかわいい豆たちの子供をとりだしました。
そんなかわいい豆たちの姿をみて、作造じいさんは今年も本当に無事でよかったとしみじみと実感しました。
そして、豆たちの頭をなでると、豆たちもにっこりと笑い「作造じいさん、毎日かわいがってくれてありがとうさまです。」とこたえました。

そんな中、豆のからから出てこない豆が一さやありました。
作造じいさんは、その豆に聞きました。
「どうしたんだい?」

するとその豆は言いました。
「作造じいさん、ぼくねえ、外に出るのがいやなんだ。」

作造じいさんが、何故か尋ねました。

豆は「ぼくねえ、外を見たことないから、とっても不安なんだ。」と言いました。

「なにいってるんだい?!ほうら、まわりをみてごらん。みんな喜んでるだろう?お前の仲間はみんな世の中に出て行くことをとても楽しみにしてるんだよ。」

「・・・ぼくは、嫌だよ!嫌だよ!」
いっこうにからから出てこようとはしません。

そんなやりとりを聞いていたほかの豆が閉じこもっている豆に言いました。
「何でそんなに作造じいさんを困らせるんだい?せっかく毎日毎日朝早くから夜遅くまでわたしたちを優しく手入れしてくれたんだよ。本当の子供のように育ててくれたんだよ。いつまでからに閉じこもっているんだい?出てくれば、作造じいさんはぼくたちをきれいに磨いてきれいにしてくれるんだよ。まるでダイヤモンドみたいにキラキラ輝くすてきな豆にして世の中へ出してくれるんだよ。そんなところにいたって、いつまでも世の中のことわからないよ。早く出ておいでよ。みんな喜んでくれるよ!」

しかし、その閉じこもった豆はさらに嫌だ嫌だとからにしがみつき、作造じいさんを困らせました。

ほかの豆たちは、閉じこもった豆に言いました。
「世の中を何も見てないうちから、嫌だ、嫌だといっててもしょうがないだろう?ここにいるぼくたちだって今日はじめてこの世の中を見たんだよ。」

すると、閉じこもった豆はびっくりして言いました。
「え〜、本当に?みんなは今日初めて外を見たの?ぼくだけが初めて見るのとは違うの?」

「違うよ〜、みんな初めて外を見たんだよ。作造じいさんが、毎日一生懸命に手をかけてくれたから、ぼくたちは立派に育ったんだよ。だから胸をはって出てきたんだよ。みんなぼくたちが世の中に出るのを楽しみにしてるんだよ。外を見て嫌だ、嫌だはないよ。よ〜く自分の目で外を見てごらんよ。きっとみんな君がすばらしい豆だ!つやがいい!って喜ばれるよ!これ以上作造じいさんのこと困らせることはしないでね。ぼくたちは、作造じいさんに育てられたんだよ。自信と誇りを持っていこうよ!」

「・・・うん、わかったよ。ぼくだけ初めて外を見るんじゃなかったんだ。それにぼくを大事に育ててくれた作造じいさんに感謝するよ。世の中に出たらみんな離れ離れになってしまうけど、自信と誇りを持って頑張るよ!だって、作造じいさんが、つくってくれたんだものね。」
そう言うと、閉じこもっていた豆がからの中から出てきました。

「ほうら、君はすばらしい豆じゃないか!こんなにすばらしく育ててくれた作造じいさんのために、作造じいさんの豆が一番いいって言われるように頑張って世の中に出て行こうね!」

作造じいさんは豆たちの気持ちを知り、とてもうれしい思いでいっぱいでした。
そして来年もまた、すばらしい豆を育てようと心に決めたのでした。

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