かかしから |
ぼくの仕事は、夏から秋になるまでが忙しいんだ。 何しろ雨が降ろうが、風が吹こうが、さらには夜になっても、1日中立ちっぱなしなんだ。 足が痛くてたまらないよ〜。 身体を自由に動かすことができないから、立ってるしかないんだ。 ぼくの主人は、お米の穂が出てきた頃、特にうるさく言うんだ。 「ほれ、鳥がきたじゃないか。なあに、よそみしてんだあ。しっかりしてくれよ〜。」 ぼくも毎日立ちっぱなしで足が痛くてたまらないので「足が痛いよ〜」って言ったら、「なに?足が痛い?これがおまえさんの仕事だろ!」って言うんだ。 こんな仕事してるなんてひどいと思うでしょう。 実はぼくはカカシの時次って言うんだ。 ぼくだって、四方八方見まわすにも限界があるし、鳥を見つけても歩いていくことできないから、どうすることもできないんだ。 そんなときに限って主人がやってきて、どなりつけるんだよ。 ぼくだって一生懸命にやってるのに、ご飯も食べさせてくれないし、眠ることだってできないんだよ。 お腹はすくし、足は痛いしで、やりきれないよ〜。 いつもおこってる主人だけど、稲刈りの時期がきたらニコニコ顔なんだ。 「おお、今年もいい米つくれたなあ。」ってうれしそう。 こんなに頑張ったぼくのことすっかり忘れてるんだ。 稲刈りが終っても、何事もなかったかのようにぼくのことほったらかしにしてるんだ。 春までずっと立ちっぱなしだったこともあるよ。 寒いし、雪は降ってくるし、吹雪のときは今にも倒れそうで、必死だったよ。 長い冬が終って、やっと春になって主人がたんぼを耕しに来たときは何だかうれしかったよ。 なのに主人は「あれ?なんで時次たってるんだい?稲刈りが終ったら、おめえの仕事は終りだべ。なあに、やってたんだい?」って・・・ ぼくはあきれたよ。 仕事が終っても休ませてくれなかったのは、主人なのに。 それに、一度もありがとうって言われたことないんだ。 悪い時だけ、ぼくのせいにするんだ。 カカシの気持ちだってわかってほしいよ。 主人だって何ヶ月も黙って立ってみたらわかるよ! 動くこともできないんだよ。 そんな大変な仕事をしてるんだよ。 もっと大切にしてほしいよ。 |
このページの先頭へ | 生き物以外メニューへ | 童話メニューへ | ホームへ |